『あ、あのー幸村きゅん?』


「精市ね」


『幸村さん』


「精市」


『精市氏……』


「まぁ許してあげるよ、で?」


『なぜ私はお泊りの準備をさせられているんでしょうか?』


「あ、タオルはあっちにあるから持って行かなくても平気だよ」


『マジで!ラッキー荷物減るじゃーん!って人の話を聞け』


「やだなぁ、言ったじゃん
明日から男子テニス部の合宿なんだよ」


『はい?』




拝啓 異国の地で暮らしているお父さん、お母さん

そういえばあなたたちどこの国に行ったのだか聞いてないんだけどどこ行ったんですか?

いや、今はそんなこといいんです


先週、私は少々おいたをしまして幸村からお仕置きされることになりました


お仕置きと言うと性的な事されるんじゃねぇか、ちょっと待ってくれよ、このサイトじゃそれは無理だよ
とか思って1人悶々としていましたが違いました

あなたの娘の貞操は守られましたよ

なんだよその顔!
どうでもいいってか?そうなのか?


あ、ちょっと脇道にそれましたね


というわけでどうやら私は男子テニス部の合宿に参加するようです


ぶっちゃけ行きたくないです、ほんと行きたくないです


どうすれば行かないで済みますか?
お父さん、お母さん教え「もうそろそろそれ終わりにしてもらっていい?」『イエッサー』


「ほら早くしなよ、明日なんだから」


そう言いながら幸村は私の部屋にあったマンガを読みはじめた

そういえばこの人なんで私の部屋にいるんだろうか

さすが魔王、なんでもアリだよ


それから黙々と準備をしていると私の中にある疑問が出た


『せっちゃん』


「ふざけてんの?」


『精市氏
私めはテニス部の方々の大半と面識がないんですけどそこら辺どうなんでしょうか?』


「あー
とりあえずみんなには言ってあるから大丈夫じゃない?」


『うわー
信用ならねー』


だって嫌じゃん!
どこの馬か骨か分からない女がマネージャーとか絶対テニス部目当てとか思われてるよ!


運悪ければ真田くんとか真田くんとか真田くんとかに殺られそうだし……

ああ、ほんと行きたくない
明日風邪ひかないかな


そんな事思いながら止まっていたまた準備を再開させると幸村が急に私の隣にぴったりとくっついてきた


『なんでしょうか』


「反応薄いね
俺のファンだったらこれだけで即死だよ?」


『だってファンじゃないから、しょうがないよ』


「ちぇっ、つまんねーの」


『うわー
うぜーこの子うぜー』


「じゃあこれは?」


『なに……ぎゃぁぁぁぁぁぁっす!?』


そう言うと私の耳元に口を寄せてボソッとつぶやいた

それがこそばゆくて、恥ずかしくて私は大きな声で叫んでいた


「あははー色気ないね
あれ?顔真っ赤だけどどうしたの?」


『お、おぬしがこのような破廉恥行為をしたからであろう!』


「何?よかった?」


『よ、よ、よ、よくないし!
明日早いから出てけこのやろー!』


真っ赤になった私をからかう幸村を自室から全力で追い出した私は扉を閉めた後に脱力してへなへなと座り込んだ



”俺以外の部員と仲良くしないでよね”



『仲良くなんてさせないくせに……
あのド変態め……』


そうつぶやいて真っ赤な顔のまま私はまた明日の準備に取りかかった








100919






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