「えーっと
はなちゃんなにがあったの?」



そう言って沈黙を破ったのは紗月ちゃんだった。



「そうだ、こいつの言う通りだ
それにお前は誰なんだよ」



「え?跡部知らないの?
知ってるから来たのかと思った



「うるせーな
それくらいわかれよ
お前マネージャーだろ」



「は?意味わかんないわよ!
あんたはほんとに腹立つわね」



「アーン?
お前程ではねぇよ」



「なんですって!
この泣きぼくろ野郎!」



『2人ともそろそろいい?』



「「あ………」」



2人のケンカが収まったところで私は幸村にプロポーズされたこと、幸村のおかげで同居しなければならなくなったこと、全て話した。





「私、幸村くんてもっと草食だと思ってた……」



「幸村らしいな」



『あのマンション跡部くんが幸村にあげたんでしょ!というわけで私を助けて跡部くん!』


そうして私は跡部くんに頭を下げた。
もう奴との同居を止める事が出来るとするならば跡部くんしかいないと思ってここまで来た。


だからどうにかなるんじゃないかと思ってた。


でも私はすっかり忘れてた。
幸村の性格を……





「七瀬は何やってるのかなぁ?」



跡部くん口を開こうとした瞬間、後ろで最近聞き慣れた声がした。



ぎこちなく振り返るとそこには満面の笑みを浮かべた幸村がいた。



『あ、あっれー
こんなとこでどうしたのー?』



「今日の放課後七瀬の様子がおかしかったから高橋さんにちょっと聞いたら七瀬は跡部に会いに氷帝に行ったって教えてくれたんだ」



ちょっと聞いたらとか絶対嘘だ。
みっちゃん……マジごめん。


私が殺られる覚悟をしていると紗月ちゃんが私と幸村の前に立った。



「ゆ、幸村くん
はなちゃんは私が会いたくて呼んだの!
だから幸村くんが魔王とか、跡部に幸村くんどうにかして欲しいとか全然話してないから安心して!」



「へぇ
何をどうにかしてもらいたかったの?七瀬は?」



紗月ちゃん、それ墓穴掘ってるって言おうと思った瞬間、幸村に両方のほっぺたをつままれてそう言われた。



『い、いひゃいれす(痛いです)』



「そうか、痛くしてもらいたかったんだね」



『びゃぁぁぁぁ!ひひれるひひれる(ぎゃぁぁぁぁ!ちぎれるちぎれる)』



ほっぺたを引っ張られて痛がる私を幸村はものすごい笑顔で見ていた。


ちくしょう………
仮にも乙女になんてこと「誰が乙女だって?」



『………』



「しょうがないから今回はこのくらいにしておいてあげるよ
俺に迷惑かけた罰としていいこと思い付いたから」



『それ100%嫌なことでしょ!
だって幸村めちゃくちゃ笑顔だもん!』



「じゃあ帰ろうか
高橋さん、跡部またね」



「ああ、またな」



「じゃ、じゃーねー」



『ちょっ、2人ともそんな笑顔で手振ってないで助けてよ!この薄情者ぉぉぉ!』



幸村に手を引かれて氷帝を去る私の叫び声は学校中に響いたとか響いてないとか………

















100801






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