同じクラスでサッカー部キャプテンを努めている神童君は、見た目と違って意外と人柄が良い。クラスの人と楽しそうに会話していたり先生ともよく会話していたり仕事を手伝っていたりする。だけど私は神童君の綺麗だが堅物そうな外見を第一印象で捉え、この人とはあまり気が合いそうにないなと喋る機会を全く作らなかった。というかそんな機会設ける程の勇気がないだけ。だが、なんと席が隣なるという事態が起きた。今、まさに。

「隣、よろしくな」
「あ、あああうん、よろしく」

一番前の席から一番後ろの席まで机大移動を終えた私が椅子に落ち着くと、隣で頬杖をついた神童君が話し掛けてくれた。そういえば神童君は前もこの辺だった気がする。いいなあ、楽だったんだ。

「?どうしたんだ?」
「ううん何でも」

思わず吃りすぎたそれに疑問を持った神童君が首を傾げる。傾げた時にふわりと柔らかそうなふわふわした髪が揺れた。神童君自体が陶器みたいだ。こんな綺麗な人が私と喋るなんて恐れ多い。私はしがないクラスメイトKくらいの役目だ。それなりに委員会や掃除等積極的にやるものの持ち前の内気な性格が生じてなかなかクラスに溶け込めない。まあ、ちゃんと行動を共にする気の合う友達がいるからそれで満足だ。神童君が覗き込むように見上げながら笑った。

「なんで百面相してるんだよ」

神童君が私を見つめるその距離が意外と近くて思わず仰け反ってしまった。この行動は人に対して失礼だ。目の前で笑顔を消した神童君を見て私の方が泣きたくなった。うわあ、私、何れ神童君怒らせそうな気がしてならないぞ。

「ごめっびっくりして、ごめん」

本当は神童君、と名前を呼びたいところだが本人を前にして言えない。口が開かない。なんか人の名前って恥ずかしくて呼べないんだよなあ。私なんかが易々と名前を呼んでいいものかと思ってしまう。……こんな考え、高校生になったらなくなればいいのに。つまらない。

「俺もびっくりしただけだから」
「ごめん」
「いいよ、別に」

もう一度ごめん、と言おうとして止めた。そんな何回も謝られてもいい気はしないだろう。あくまでにっこりになれるように笑ってみせた。神童君はそんな私の不恰好な汚い笑顔に何を思ったのかは分からないが、顔を歪めた。儚げで悲し気で、綺麗な彼には無駄に合いすぎた表情だった。でもその表情は綺麗だけどやっぱり笑って欲しかった、なんて思える立場じゃあないんだけど。

「……なあ。お前って、俺が嫌いなの?」

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