隣の席の三橋君。いつもおどおどしているけど、とっても優しい三橋君。田島にいい様にコキ使われる三橋君。泉に助けられる三橋君。

「そんな三橋君に問題です!てーれんっ」
「っえ、え?」

隣の席の三橋君の方に身体を向けて座った私は、彼を見詰めながら人差し指をぴしりと天上に立たせた。案の定三橋君は意味が分からないというか突然で驚いたというか、とにかくいつものようなおどおどした態度をしている。

その黄土色の髪と似ている瞳をきょろきょろと忙しく泳がせた後、ゆっくりと私を見詰めてきた。大分落ち着いたようだと思って笑顔を見せると、彼もまた小さく笑った。

「彼は誰でしょう?」
「えっ?か、彼……」
「分かんないでしょ、だってまだ名前言ってないもん」
「う……」

私だって何も言わずにいきなり言う筈ないじゃあないか。今から彼についての問題を言うから、彼が誰なのか当ててみましょう。ね、三橋君。

少し不安そうに私を見ている三橋君の肩をぽんぽんと叩き、人差し指を立てたまま、では問題ですと声高らかに言い放つ。

「彼はたれ目か」
「!?」
「マルかバツで」

マルバツ形式だなんて思ってもみなかったであろう三橋君はおろおろと目を涙ぐませている。どちらにしろ、合ってるか合ってないかは三橋君の答え次第なのだ。私には何の負担もかかりません。

ほら三橋君はどっちだと思う?そう急かせば、彼は小さくバツと言葉を紡いだ。

「じゃあ、彼は背が高い?」
「ば、バツ……」
「彼は坊主?」
「……バツ……」

なんだよ、バツが多いな。ちゃんと答えてくれているのかと口を尖らせてみたが、三橋君はちゃんとやってるよと慌てて言ってきた。彼にしては主張するような大きな声だったので、思わず表情を緩めてしまった。

「彼は自転車通学?」
「ま、る」
「彼の家は近い?」
「……マル……」
「彼は同学年?」
「マル……」
「ソバカスはある?」
「……え、と……」

快調だった反応が突然鈍くなってしまった。目は先程のようにきょろきょろと泳ぎ、顔も辺りを見渡すように動く。

その顔が向く先には、多分田島だった。三橋君は田島を考えながら答えていたのか?いや、それは不都合だ。だって田島にはチロルチョコあげたし、コンビニにある詰め合わせのやつ。

「三橋君は田島だと思う?」
「え……と」
「残念ながらあいつじゃないよ?あいつにはチョコあげたから」

すると三橋君が勢いよく身体をつんのめてきた。その顔はいつものように真っ赤で不安そうだったが、見方によっては嬉しそうにも見える。私の場合は後者である。

ちょっと近すぎるよ三橋君、そう言いながら彼の肩を押して席にしっかり座らせる。ごめんと小さな声が聞こえてから、私はまた口を開く。

「彼は野球部?」
「ま、マル……」
「彼は内野手?」
「……バツ」
「じゃあ、彼は一番多くボールを持つのかな?」
「……マル」
「私と同じクラス?」
「う、ん」
「私と席が近い」
「……うん」
「そっか。じゃあ彼の名前は」

そこで彼は恥ずかしそうに俯き、口元に手の甲を寄せた。

「……三橋、廉」

彼の名前が彼から聞けた所でこの問題は正解した。おめでとう、なんて自分から流れを仕向けた私にはとても説得力のない言葉だけど、照れ臭そうに私から顔を逸らす彼の膝に赤いラッピングを施した、唯一の手作りチョコを置いた。

「田島はチロルで三橋君は手作りなんだ。この意味、分かるかな?」

すると彼ははにかんだ笑顔を見せて、うん、と頷いた。



Happy Valentine's Day!

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