カラリとした空間に眩しい太陽を仰ぐと、夏が始まったんだと私は軽く息を着いた。

「なんだよ、溜め息か?」

隣から聞こえた声に視線を向ければ、眠そうな顔をして机に頬をくっ付けて横になっている河合君と目が合った。私は迷わずまあそうなるよねと返した。

「おま、そうハッキリ言うの止めろよ」
「ああそっか、河合君今年最後の大会だからね」

だからそれがハッキリしてんだよと苦笑されてしまい、私は惚けたふうに下敷きで自分に向けて下から風を送る。髪がぶわりと浮き上がる感じが不快で顔を顰めたが、手は止まらない。身体は正直だと言ったものである。

「俺の夏は終わらねえ」
「かっこいいこと言う」
「……その真顔止めろよ」
「河合君はいつも私にクレームつけるよね」
「なんか一々むかつくんだよ」
「理不尽ですね」
「…………」

ぎゅうと眉を寄せた河合君にわざとらしく舌を覗かせる。それで更に刻まれた眉間の皺を見て、分かりやすい人だと私は小さく笑った。河合君は溜め息を落とした。

河合君の反応はすぐに予想がつく。私がして欲しいと思った事を簡単にしてしまう。面倒臭そうな顔をしている河合君に理不尽ですねと再び言ってみる。河合君は言ってくれる。むかつく。

「それがむかつく」

ほらきた。おまけに溜め息を吐かれてしまい、私は笑う。なんでこんなに河合君は分かりやすいのだろう。この人捕手なんだよね?頭良いイメージのある捕手なんだよね?しかもキャプテンなんだよね、いつも私にクレームばかりつけてくるような人がキャプテン。何それどんなギャップ?

「河合君って変わってるよね」
「……いや、お前の方が変わってると思うけど」
「え、どの辺が?」

すると河合君は机に投げ出した腕に顔を埋めてしまった。短い髪の毛から覗く頬から耳にかけてすごく真っ赤で、熱があるのか、なんて思う訳がない。私はそこまで馬鹿ではない。熱あるの?なんて聞く女がいるなら是非思考回路を見せて頂きたい。ぶりの子なんだねと言いたい。

「河合君、赤いよ」
「赤くない」
「嘘つくなよー、照れてんだろ?ちょい意識してんだろ?ねえ河合君」
「うるっせ」

顔を上げてくれなくて、私の机にちょこんと存在していた、不格好に歪んではいるが鶴と認識して欲しい形をした水色のそれを河合君の腕に乗せた。

「頑張ってね」
「……素直じゃないよなお前」

溜め息混じりにそう言いながらもはにかむ河合君の方も充分素直じゃないと私は思う。

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