平日の朝は起きるのが超絶怠い。休日ならば一日を長く有意義にしたくて早起きは得意なんだけれど、平日はねえ……。

「島崎君はどう?」

隣に並んでたらたら歩いている彼の方を見てみると、欠伸をしていた。それは返答する必要もないと言っていると認識してオーケー?

「眠い」
「いつも眠そうな顔してるもんねわかる」
「何お前拗ねてんの」
「拗ねてないよこれは眠さからくる苛立ちで……」
「お前も眠いんじゃん」

目尻をゴシゴシ拭う島崎君に言葉を詰まらせる。朝は苦手なんだって私今言ったじゃん、眠いに決まってるじゃん。それなのになんだコイツ。上から目線ってどういう事だ腹立つ。

しかし釣られて欠伸をしてしまえば可笑しそうに顔をくしゃりと崩されて、照れ隠しに私は彼の腕を叩いた。

「イテェ!骨折れたかも」
「ひょろひょろだもんね」
「普通そこは否定すべきとこだろ。何肯定してんの俺すげー不憫」
「骨折れたらまず私の馬鹿力に感心しちゃう」
「お前は充分怪力だよ」
「私は標準です」

腕をするすると撫でながら私にじとじとした視線を向けてくる島崎君を再び叩く。先程の流れとは違い叩き返されてしまった。しかも頭。コイツ女相手にどんな野郎だよ。ああ、こういう野郎なんだよ。

「痛いよばか」
「手加減しただろ、女ぶってんな」
「……いや、私女なんですけど」
「知ってる」

その後は何も言い返せなくて、叩かれけど痛くもない頭を労るように撫でてみる。島崎君は、普通そこ違う反応だろという所でまさかの行動をしてくる、いやらしい男だ。思わず照れてしまった。いや私はどう見ても女だけどね。

島崎君は照れる私に何を言う訳でもなくポケットに手を突っ込んでただただ歩いていく。私もそこにツッコミをいれる訳でもなく習って歩く。登校中なのに変な空気になってしまった。

その変な空気が重くて苦しい訳ではない。どちらかというと身体が過剰反応して気持ち悪い。きゅんきゅん。……うわあ自分が気持ち悪い。

「放課後は部活で大変だ」
「帰宅部に対する嫌味のつもりかもしれないけど私には全然効いてないから。逆にざまあみろって感じなんだからね」
「朝練もあるし」
「…………」

朝練はまだだ。島崎君が学校に着いてしまえば朝練だが、今はまだだ。私と並んで登校中なのだ。ああ、眠いなあ。

「朝から俺頑張れそうだわ」
「自分から来といて何を仰る」
「お前よくすんなり起きたな」
「平日ですから。君に朝っぱらから家に押し掛けられても平日ですから」
「嬉しいだろ?」
「その台詞そっくりそのまま返してみるけど、どう?」

島崎君は徐に私の手を取るなり、眠そうだとは考えられない程の満面の笑みを浮かべた。

「勿論」

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