絶対に美味いプロテインを手に入れてみせると意気込み、最終的の結果までをスコアに書き終えた。

「巣山、見せて!」
「おう」

あの田島の反応を見た水谷も絶対に勝ち取りたいらしく、奴にしては真剣に試合を眺めていた。俺のスコアと自分のスコアを見比べた後、水谷はにやりと笑った。

「いけるよ、俺達勝てる!」

3回まで見て武蔵野が勝つ予測して組み立てたそれに何処からか確信を得たのか、水谷が拳を握る。俺もスコアに自信があるから、きっと大丈夫。

お互いに握った拳を肩の辺りで掲げて頷き合い、最終確認として前の席に居る先生とマネージャー二人のスコアを見ようという話になった。一番近くに座っている苗字の肩を、水谷が軽く叩いた。

「スコア、どんな感じ?」

苗字は一瞬困ったようにおろおろと先生と篠岡を見たが、二人に一言告げてからスコアを渡してくれた。水谷と見てみると、武蔵野勝利を前提に書かれていた。打点やヒットの感じも似ている。いけるぞこれ。

「苗字も武蔵野優勢?」
「う、ん。処理、上手いし……榛名さん、出るから」
「うんうん!阿部の口振りだと榛名って人凄そうだしなあ」

ニコニコとしながら水谷が同意する。先程まで何やら焦って泉と言い合いしていたのが、まるで嘘のようである。機嫌が良くなったのは田島に何か聞いてからだ。いい事でもあったのだろう。

水谷が苗字にスコアを返すと苗字は立ち上がり様に、俺達のスコアを貸してくれと言ってきた。監督に出してくれるらしい。

「サンキュー」
「頼むよう」

俺と機嫌の良い水谷からスコアを受け取った苗字は他の奴のそれを集めに行ってしまった。少しの間苗字の事を見詰めていた水谷が、ふと溢す。

「なんかもうやる事やったから、試合見る気もなくなっちゃったなあ俺」

大きな欠伸を一つしてから空を見上げた水谷に、完全にやる気なくしたなと悟る。集中力が無さすぎる。まあ目的は達成した訳だから、別にどうこうぼやく必要もない。どちらかというと俺ももう試合はヒットとか気になるだけであまり真剣に見ようとも思っていない為、釣られて欠伸をする。これ見たらまたランニングで練習再開するんだろうな……。

あれは恥ずかしすぎるよなと会場に来た時の事を思い出しながらふうと息を吐く。なんか自転車乗ってる苗字まで恥ずかしそうにしていたから、こっちは更にそうだった。帰りは流石に慣れるか……?

「ねえ、巣山」
「え?」
「人ってどれくらいで人を好きになるのかな?」
「知らねーよ。人それぞれじゃね?」
「可愛い女いたらちょっとドキッてするの、普通だよな?」
「あー、普通だろ」
「だよな!」

その時初めて水谷の顔を盗み見た。別に、いつもの普通の水谷だった。

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