趣味が全開であるA

「ん?何でサラシなんか巻いて……」
開いたシャツの隙間から白い何かが見えたので少し広げるとそこにはサラシがぐるぐると巻かれてあり

そして、男子としてはありえないふたつの膨らみがあった。



「…………………へ?」

えらく間抜けな声が出る。これは、その。彼は、いや彼女は
「……女の、子?」

言葉にするとするりと脳に入った。驚きのあまり良くないとわかってはいるが目の前で呼吸と共に動くその柔らかな膨らみに、つい目が行ってしまう。

寝顔と交互に見合わせると確かにそこには一人の女の子がいた。今まで男子だとしか思えなかったその顔は不思議と可愛いなと思いはじめる自身にも驚く。


そしてシャツを掴んだまま小十郎は数秒間ほど固まっていた。どこをどう見ても変質者である。しかし政宗が身じろいだので慌てて手を離そうとするが一瞬で開いたままのシャツを直すことは無理だった。

つまりはぱちりと目を開いた政宗に弁解する余地もない状況となっていたのである。

「え?……え?」
数秒ほど小十郎の顔とシャツを掴んだままの手を交互に見合わした。
そして状況を理解したらしく政宗は息を呑む。
「きゃああああああああああああ!」
甲高い悲鳴が小十郎の耳をつんざいた。自身のシャツが大きく開かれており一人の男がその部分を凝視していたのだから無理もない。


困惑した表情で謝りながらいまだシャツを掴んでいた小十郎の手を振り払う。体を起こしてつなぎ合わせるように政宗はそれを隠した。

「ご、誤解だ!悪い!そんなつもりじゃない!」
と狼狽する小十郎だったが今にも泣き出しそうな政宗を見てあわあわとさらに慌てる。涙を目に溜めて小さくぽつりと政宗は言葉を漏らした。


「……お願い、だから、誰にも言わないで」

それは普段の強気な態度からは想像もつかないようなか細い声で。
「じゃないと、私……」
そして今度こそ泣き出す。両の手のひらで顔を覆った。大粒の涙が何度も溢れ出る。

その良心がちくちくと痛む状況に思わず片手で自身の胸を押さえた。うわああああ教え子に泣かれるのがこうも辛いとは思わなかった。
しくしくとむせび泣く政宗にいっそ土下座で平謝りでもしようかと思った瞬間、小十郎は何か強い力に引き戻された。


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