趣味が全開である 小十郎(理科教師)と政宗。 「どうしました」 廊下でうずくまる政宗を見つけ小十郎は声をかける。 「なんでも、ない……」 顔は俯いたまま政宗は胸のあたりを押さえて酷く辛そうな声を出した。その様子に慌てて小十郎が膝を曲げて顔を覗きこむ。 「それで何でもないわけがないでしょう!」 その顔色を見て小十郎は思わず怒鳴り酷く青ざめた顔をしていた政宗に、そんなに辛くなっても頼ってくれないのかと眉を下げて呟いた。 「立てますか?とりあえず保健室に向かいましょう」 「え……でも、授業」 「そんな酷い顔して何が授業ですか。今は大人しく休みなさい」 ため息混じりに小十郎は強い口調で叱る。それでも政宗はまだ微妙に渋っていたのだが 「……これでも心配しているんです。私のためにも、言うことを聞いてくれませんか」 と、無理やり手をとり肩に手を回して歩き出した。思ったよりも軽い体に少し驚く。 ちゃんと毎食食べているのかと聞きたくなったが今はそんな場合ではないと口を閉ざした。政宗も胸を押さえたまま何も話そうとはしないままである。 「明智先生は、いないのか」 タイミングが良いと言うべきか悪いと言うべきか保健室に先生はいないようである。 性格的には難はあるが、仕事面では信頼出来るのでいないとなると少し困った。 とりあえずベッドを勝手に借りることにする。 「寝てなさい」 ぴしゃりと一言だけ告げて政宗をベッドに下ろした。ベッドの間を隔てるためのカーテンを閉めて落ち着けるように一人になれる空間を作る。 カーテンの外に出た。せめて明智が来るまではそばについていようと窓際の椅子に腰を下ろす。 しばらくはもぞもぞと動く物音がしていたが数分するとそれも止んだ。 寝たのだろうかあんなに辛そうにしていた政宗を一人にしてはいけないのではないかと思いながらカーテンを軽く開けて様子を窺う。確かに寝てはいるようだがシャツの胸のあたりを引っかくようにしているのに気づいた。 息苦しいのだろうかと思いシャツのボタンを何個か外す。 1/3 [mokuji] [しおりを挟む] |