図書館にて 元就と政宗 「寝るな」 本からは目を離さずに声をかける。不機嫌そうにも聞こえるがそれが素だと今までの付き合いでわかっている。「morning.」と寝ぼけた声を出しながら政宗は起きた。 気づけばもう夕方らしい。窓の外が真っ赤だ。 「寝るくらいなら帰れ」 ずばりと切り捨てられるが「No」と語尾を伸ばして否定する。 「俺はアンタが帰るの待ってんだぜ。それで、その調べものってのはいつ終わるんだ?」 装丁の分厚い本を枕にして寝ていた政宗は目を軽くこすった。首だけをそちらに向けて一向に目線すら合わさない元就にまだかよと子供のように口をとがらせる。 「我は待っていろとは言っていない。貴様一人で帰れ」 「つーめてえの」 その態度にも慣れているのか口笛を吹きながら聞き流した。 「……大体帰る相手なら他にもいるだろう。我に構うな。うっとうしい」 普段一緒にいるあの赤いのとか橙なのとかを指しているらしい。 にやにやと笑っていた政宗はその一言でつまらなさそうに顔をしかめた。 「あいつら用事あるって先に帰った」 人置いていきやがったとすねるような口調に元就はちらりと視線を向ける。 「だから代わりにか」 「いーや、代わりってわけじゃねえよ。ただ帰りに寄りたい所あるから会長様が付き合ってくれたらなと」 「くだらん。一人で行け」 手振りを付けて一蹴された。しかしそんな扱い政宗はとっくに慣れている。対応策と共に。 「……会長の好きなゑびす屋のたい焼き、昨日から新メニュー出たぜ」 「何を寝ている。さっさと行くぞ」 その一言に、鞄を肩にかけて颯爽と立ち上がる元就。返事もそこそこに図書室を飛び出した。政宗も立ち上がり急いでその後ろ姿を追う。 「……わかりやすい奴」 面白い友人を持った楽しさを改めて認識したのか、ぽろりと笑みをこぼした。 幸せを噛みしめるとはこういうことなのだろう。 元就は甘いものが好きそうなイメージあります。洋菓子より和菓子派で [mokuji] [しおりを挟む] |