本末転倒@

佐助と幸村と政宗。


「おーい、起きろー」
ぺちぺちと頬を叩くと軽く身じろいだ。そして幸村は飛び跳ねたように起き上がる。
「…………っ!」
「うわ、びっくりした」
旦那おはようと呆れたように佐助は話しかけた。

「それがしは、また」
「そう、また」

その問いに佐助は肩をすくめて答える。
「前田先生の授業でよかったね」
旦那がいかにも疲れてる感じだったからそのまま寝かしてくれたっぽいし。カジキマグロを片手に教鞭をふるう半裸の教師を思い浮かべた。というかその格好はどうなの。


「お、お館様に合わせる顔がない!」
両手で顔を覆い今にも泣き出しそうな声で嘆く幸村。ちらほらとクラスの数人が話を止め振り向くがいつものことなのだろう。何事もなかったように会話を続けていた。

「いやーあのオッサンも相当無茶なこと言ってると思うけど」
「オッサンとはなんだ佐助!」
お館様に侮辱とあればいかなお前でも許さぬぞ!幸村の机の隣に立つ佐助に向かって怒り出した。


「まあまあ怒んないでよ旦那」
怖いんだから。佐助はうそぶきながらとりあえず幸村をなだめる。


「……どうすればいいのだろうか」
「部活の練習量減らしてもらえば?」
朝練昼練ぷらす下校時間ギリギリまで練習してるから授業中に毎回舟こぐことになるんだよ。こういう時の佐助は中々辛辣である。


「そんなことは出来ん!俺にはお館様の期待を裏切るなど考えられぬ」

「いやあ、でもさあ、アンタの実力なら普段の練習だけでも十分じゃないの?」

「誰よりも努力することが大切なのだ。そんな甘い気持ちでは勝てる戦も勝てぬぞ、佐助!」

「……熱血バカだねえ」
でもそれで授業寝るのは違くない?佐助の言葉に幸村はまた落ち込む。


「武田先生のモットーは?」
「……文武両道」
「だねえ。守れてる?」
「……………」

無言は肯定。
幸村自体はいたって真面目な学生なのだが、激スパルタな信玄の練習のため授業中は数分もしないうちに夢の世界へ旅立ってしまうのである。人権を無視したような練習を強要させるくせにそのくせ勉学も怠るなとはなんと面倒な親父だ。


そのせいか最近の幸村の成績は右肩下がり。落ちるわ落ちる。さようなら平均点。こんにちは赤色の世界。成績表に並ぶアヒルとポッキー。


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