留文←仙で小ネタ 後

前回のあらすじ
S蔵がドSを発揮した。以上






そこで記憶は切れる。
そこから先は覚えていない。思い出したくもない。
しかしいつまで経っても仙蔵の勝ち誇った笑みだけは頭から離れようとはしないのだ。

ああ、気持ち、悪い。

「おい、大丈夫なのか……体調が悪いんなら伊作にでも看てもらえ、な?」
今の言葉を聞かれたらしく文次郎は心配そうに留三郎を諭す。
しかし原因がわかっている留三郎にとってそれは意味のないことなのだ。
「別になんでもない…ただ、」
この酷くもやもやとする気分は、

「お前に好かれてるのか、自信がないから」
なんだろうなあと留三郎は俯いた。
がっくりと文次郎の肩に額を乗せたため文次郎の表情がすっかりと見えなくなってしまった。
ああ、情けない。きっと文次郎もそう思っているだろうなと思い顔をさらに上げれない。

しかしいつまで経っても何も言葉は降ってこなかった。
文次郎、と留三郎が観念したように口を開くその前に文次郎も留三郎の肩に額を乗せて呟く。


「…………好きだ」
まるでその姿は抱き合っているようで誰が見てもふたりは思い合っているように見えたのかもしれない。

「へ?え――えええ!?文次郎今なんて!?」
「バカたれ!!」

なあ、仙蔵。
お前はこんな風に心配してくれたり真っ赤になって照れるこいつを見たことなんて、ないだろう?

視界の端に見える深緑は自分が出した都合の良い幻影なのかもしれない。
それでも、今は

その深緑に少しだけ唇を曲げて微笑を作ると文次郎が自分のことを笑ったのだと誤解して林檎のように頬を赤く染めていた。




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