留文で小ネタ

ひい、ふう、みい、よ、いつ、むう、なな、や、と丁寧に指を折っていく。自分でも不思議なくらい鮮明に覚えていることに少し驚いた。どうやら俺は記憶力が良かったらしいと呟くと、隣で帳簿を合わせていた文次郎が不思議そうに首を傾ける。

「何やってんだよ」
「んー…数えてる」
「何を」
「お前のこと」
「は?」
怪訝な顔をする文次郎に少しムッとした。

「なあ文次郎」
「……なんだよ」
「俺のこと好きか?」
「嫌いに決まってんだろ」
「即答かよ…やっぱりテメェとは気が合わねえなあ。俺は好きだぜ」
「嘘つけ馬鹿留。大体、気が合う奴が良いんなら俺に構わないで伊作の元にでも行っちまえ」
「嘘じゃねえよ。第一、伊作とは何もねえって」
「……あんなに仲が良い癖にか」
「同室なんだから仲が良いのは普通じゃないか?…第一、それならお前と仙蔵はどうなんだよ」
「俺は良いんだ」
「……お前」
「俺は良いけどお前は駄目だ。」
「我が儘過ぎるぞ」
「うるさい、バカタレ」
「……お前本当に可愛いなあ。好きだぜ文次郎」
「!! ……俺は嫌いだからな、お前なんか!」
「ほら、やっぱり素直じゃねえ!」

君の赤く染まる顔を見て、つい、口元の歪みを抑えきれなくなってしまった。
そういう所が可愛いって言ってんだよ。
お前は気づいてないんだろうけど。

手を伸ばして肩を寄せた。
そんな顔が見れるんなら何度だって言ってやるさ。

今日も数えた数字は八のまま。
今は両手で事足りるけど、いつかは数え切れないくらいに増えていることを願った。


(それは君が好きって言い返してくれた回数)





しょくまん先輩が非常にけまけましい。




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