長文で小ネタ




「おお、もう土筆が生える時期か」
「…………そうだな」
「知らない雑草がいっぱい生えてるな。」
「…それは車前草だ……」
「へえ、よく知ってるな長次。じゃああれは何かわかるか?」
「……あれは蓬だ」
考える節もなくすらすらと答える図書委員長に流石だと感嘆の声を漏らす。
学園の膨大な書物に精通している長次にとってこれくらいの知識は朝飯前のようだ。

「……この花は、まるでお前のようだ」
腰を曲げて膝の上に手を置く。ぼんやりと黄色い花を眺めていると長次がそう呟いた。
「蒲公英と、俺が?」
共通点なんて無いだろうと文次郎は不思議そうに長次を見上げる。

「……どこへ行こうとも根をしっかりと生やし、真っ直ぐと揺らぐことの無いその姿が似ている」
「長次?」
言葉を言い終わる前に長次は文次郎に手を伸ばす。その花の茎を彼の頭に差すと、可憐な花弁が風に揺れてその存在をしっかりと主張していた。

「よく、似合っている」


「え、あ…こ、これ!」
「………?」
「この花、綺麗だな!」
長次の表情にどうしようもなく照れくささを感じて無理やり話題を変える。
めったに見ることの出来ないその笑顔に顔が火照ったのを感じた。無理やり隠そうとしたが、長次は文次郎のその様子にさらに目尻を下げて笑っていた。
可愛い、だなんて思うのは惚れた弱みなのか。
しかしその言葉は胸にしまい込み、その花に目を向け、長次は名前を教えた。
のだが

「……それはオオイヌフグリだ」

「!つまり、犬の……」
「…………。」
二人は微妙な空気に包まれた。



「……ということがあった」
「そ、そうか…」

(風情もへったくれもねえ)






私は長次に夢を見すぎかしら。



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