[2] ep.07[Once] その日の夜、サイレントにしている携帯端末に通知が入っていることに気が付いた。 『ミヤビの周りは魔女狩り病大丈夫か?俺の地元南なんだけど、ちょっとヤバそう。お前も気をつけろよ』というアイザックからのメッセージと共に、ネットニュースの記事のURLが送られてきている。 「魔女狩り病?焔、魔女狩り病って知ってるか?」 「聞いたことあるかも。でも何だったか覚えてないなあ」 焔の返答もいまいちで首をかしげる。出会ったばかりの人間を安易に信用してもいいものだろうかと思ったが、つい好奇心で送られてきたURLを開いた。 『国内で再び魔女狩り病感染拡大か』というタイトルのもとに、レトリアの南部地域で大勢の感染者が認められていること、魔女狩り病の諸症状、感染の疑いがある人は必ず早期に受診するようにとのことが書かれていた。 記事によれば、魔女狩り病とは昔世界的なパンデミックを引き起こした恐ろしい病で、近年では特効薬や治療法が開発され早期の治療で完治が可能となっているが、その当時は死に至る病として恐れられてきた。 「へえ。でも過去の病がなぜ今になって流行してるんすか」 「知らん」 「ええ…」 気になるじゃん、とぶつくさ文句をたれながら焔は勉強に戻った。もうすぐ入試を控えているため勉強の邪魔をしたら悪いと思い、教えて欲しいと頼まれるまで静かに携帯を触っていることにした。 雅はアイザックからのメッセージを既読無視していたことに気づいて、返信を送る。 『こっちはまだ大丈夫』 と、ありがとうのスタンプ。するとすぐさま既読がついて返信があった。 『南は特にさ、皆頑固だから身元がばれるのを恐れて皆治療を受けたがらないんだ。だから感染拡大するんだろうね』 なるほど、と画面越しに相槌を打つ。返信する間も無く直後に新たなメッセージ。 『話変わるけど、ミヤビって水3の生物学受けたことある?』 『去年だけど』 『ノート見せてください!!レポートがヤバいんだ』 アイザックの手を合わせて懇願している姿が浮かんで、つい笑ってしまう。どうぞとノートの写真を送ると『神!!今度なんか奢ります!』と返ってきた。さらに続けて『そうそう、面白い話を見つけたから暇なときにでも読んでみて』と匿名掲示板のURLが送られてきたので『早くレポートやれ(笑)』という雅からのメッセージを既読無視して会話は終わった。 [mokuji] [しおりを挟む] Copyright (C) 2015 あじさい色の創作ばこ All Rights Reserved. |