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ep.05[Expand]

「口をはさんで悪いけど、ユージンさんはイノセンスがあまり好きではないみたいっすよね。それはどうしてなんすか?」

 今まで静かに話を聞いていたノイズが、話が途切れたのを見計らって疑問を口に出す。

「ああ、それな、ボクはあんたらの擁護する政府が大嫌いなだけや」
「ちょっと待て、俺らは別に政府を擁護しているわけじゃない」
「あいつらの主張聞き入れて頷いとったら同罪や」

 同罪だと言われて村長は頭を抱える。考え方が根本的に違う人間とは、どうにも馬が合わない。

「確かに、僕たちは政府の主張に異議は唱えない。ただ、僕たちはこの政府のシステムを昔のように戻したいだけなんだ主張は受け入れても、政府が無理やり捻じ曲げた法律を元に戻さない限り、政府は僕らの敵だよ」

 トロイの澄んだ瞳はまっすぐユージンをとらえている。その真剣なまなざしに嘘がないと悟ったユージンは両手を挙げて降参のポーズをした。

「なるほど。ただし一つ忠告だけしておくで。国を変えたいとかたいそうな事言いよるんなら、治安局をたたくだけじゃあかん。もっと上の、皇族に刃向かうだけの覚悟と勇気はあるのか?」

 覚悟と勇気。それはどれほど重く鋭い言葉だろうか。時期を待っているふりをして、結局は勇気がなくて心の底にしまっているだけなのだろう。事情をよく知らないノイズはともかく、トロイと村長は黙り込んでしまった。「やはり温室育ちのイノセンスやな」とユージンはため息をつく。
 もし仮に覚悟も勇気もあったのだとしても、今のままでは戦力不足だということも確かだった。

「……僕たちは、失った大切な人の願いをかなえたい」

 小さな声でトロイが恐る恐るつぶやく。ユージンの反応は予想に反して、机をたたいて身を乗り出し、興奮気味に激励を飛ばした。

「そういうの大好きや!そん時は手伝うからぜひ呼んでくれや!戦力には、ならんかもしれへんけどな」
「ありがとう」
「ああ、情報料なら別にいいで。たいしたこと教えられへんかったし、これじゃあアンフェアやで」
「いや、僕は別にかまわないよ。ただ――」

 そう言いながらトロイはノイズのほうをちらと見た。知られたくないのだろうと察したユージンはトロイのほうへ耳を寄せる。
 トロイは自分の能力、そしてユージンの言うとある兄ちゃんの能力について推測されることを一通り話した。聞いていたユージンはぞっとした様子で目の色を変えた。


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