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ep.05[Expand]

「で、報酬は?お金持ってるようには見えへんけど」
「さっき君が知りたがった、珍しい能力とやらの情報に価値はあるかな」

 ユージンは「ほお」と一言、それから何も言わずに再びトロイに歩み寄る。そばにいたノイズは何を思ったわけでもなく反射的にトロイの陰に隠れるように一歩下がる。さっきとは打って変わり無表情でトロイの目をじっと見つめるユージン。その目は暗闇のように深くて何を考えているのかはわからない。

「ま、ええわ。例のとある兄ちゃんは何も教えてくれないし、ちょっとでも新しい情報が手に入るんなら安いもんや」

 立ち話もなんだからまあ座りな、とユージンは三人をソファーに座らせる。ライラが「ここはあんたの事務所じゃないわよ」と口をはさんでも当のユージンははいはいと手を振って応えるだけで気にも留めない素振りだ。

「それで、あんたらは何が知りたいんやっけ?」
「次の――」
「人工ミュータントの話について、何か知らないかな」
「おい!?」

 トロイは村長の言葉をさえぎってユージンと取引を進める。

「人工ミュータントの話は知らんなぁ。噂で聞いたことはあるけど真偽はわからんで。」
「なら僕の情報は君にとって価値のあるものだと思う」
「それなら大歓迎や。何でも聞いてくれ!」

 村長はこれが狙いか、と合点したが、トロイの言う人工ミュータントというものと、なぜ彼がそんなことを知っているのだろうかと疑問を覚える。それについては後で問いただすとして、まずはユージンから情報を聞き出すのが先だとも理解した。

「単刀直入に言えば、狩りについての情報を知りたい」
「狩り、ねえ。」

 ユージンはしばらく黙り込んで天井を仰ぎ、何やら思考を巡らせている。数分沈黙が続いた後、ユージンは三人に再び向き合った。

「特にこれといった確証はないなあ。ただ最近の政府の動向を見ている限り、早くて二、三年だと思うけどなあ。あ、あくまでこれはボクの推測やから本気にしないでくれや」
「と、いうのは?」
「せやなあ、こんなこと言っちゃあれやけど、ボクの知り合いがスパイと言っちゃ聞こえが悪いが、政府内部に何人かおるんや。そいつらに人事を探ってもろて。最近ニュースにもなっとる異例の人事に加えて、治安局の、特に特別班の新人大量起用、それから研究棟の若い職員の異常なカウンセリング受診率。政府が何か企んどることは確かや。けど、そんなこと知ってどないするん?まさか特別班に対抗するんじゃないやろな」

 トロイは村長のほうを見た。村長は「いや、そういうわけじゃないが」と頭をかいた。


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