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ep.05[Expand]

「西のはずれのどこかに、知りあいの情報屋がいるわ」

 諦めかけた三人に、一風変わった女──いや、おそらく彼女は男だろう──から思わぬ情報を手に入れる。情報屋が政府と通じているという噂は耳にしたことがあった。噂好きの市民ははたしてそれが真だと思って情報を回しているのか、単なる娯楽としての世間話でしかないのか。どちらにせよ政府の機密事項が少しでも漏出したらあっという間に国中に広がるだろうから、重要な情報を握る上層部となるとたとえシスに当たることができた所で情報を聞きだすことはできないだろう。

「情報屋か……当たってみる価値はあるな…」
「どこにいるかはあたしたちにもわからないけどね」
「ルーク、もしそいつに会えたらついでに”ノワールに戻る気はないか”と伝えてくれ」

 その情報屋というのはどうやら元々ここノワールの一員だったらしい。

「何とかしてみる。会えたらちゃんと言っとくよ、ありがとな」
「慌ただしいねぇ、せっかく西まで来てくれたんだからもう少しゆっくりしていってもいいのに」

 エレノーラは残念そうに肩をすくめる。第一印象が「村長がお金を借りた人」だったので長年の友人だという話を疑っていた兄弟だったが、エレノーラが心底さびしがっている様子を見る限り本当に長年の友人なのだろう。

「でもそいつ、何処にいるのかあたしたちでもさっぱりわからないのよ」

 風貌に似合わない普通の男の声で、その人は付け加える。
 村長とエレノーラはタブレット端末で地図を見ながら、ああでもないこうでもないと目星をつけている。

「ノイズは西を歩き回っていたんでしょう、何か思い当たる節とかないの?」
「そう言われてもなあ」

 ノイズは手元を隠すほど長い袖の裾の先から少し手を出し、白い息で冷えた手を温めている。よっと声を出して身を乗り出し、タブレットを覗き込む。少し考えた後、エヴァの方を向いてつぶやいた。

「そういえば……人探しならライラさんにお願いしたほうが早いんじゃないすか?」
「それだ」

 エヴァはすぐさま携帯でライラに連絡を取る。ワンコール、ツーコール、皆がしんと静まり返って応答を待つ。

「ハロー、ライラ?」

 こんな微妙な時間だというのにライラは起きていたようで、案外すぐ電話に出た。

『なによこんな時間に』
「ユージンの居場所を特定できるかしら?」
『ああ、ユージンなら今ここにいるわ』

 え?と一同から驚きの声が漏れる。

『はぁーい、ノワールのみなさんお元気ですかー?』

 冷めたライラの声とは打って変わって陽気な声が電話の向こうから聞こえる。エレノーラはため息をついてエヴァに電話をかわるよう言った。

「ユージン、あんたいまどこをほっつき歩いてるんだい!」
『げっ、組長』
「イノセンスの子たちがアンタに会いたいっていうんだ」

 情報屋を頼りたいという旨を伝えるとユージンはしぶしぶ了承してくれた。所々で「イノセンスとは極力かかわりたくない」と言っていたのは聞かなかったことにしておこう。

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