Sky is the limit! | ナノ
「おいアンタ」
「ん?私?」
「そうっス。アンタ、俺と試合しろよ」
「……しろよ?」
ピクリと梓の眉が不快そうに動いた。明らかに先程の食事を取った後の雰囲気ではなくなった。
「あー、切原くんだっけ?2年だよね?」
「はぁ、まぁ…」
「年上には敬語を使いましょうね?」
「はぁ?なにアンタ」
梓と赤也が喋るにつれて、周囲はピリピリと張りつめていく。誰が見てもイライラしている梓に気がつかないのか、赤也は梓を睨み付けていた。すると梓はにこりと笑って、肩越しに親指で背にあったコートを指差した。
「入れよ」
「!」
今まで聞いたことのないくらい低く冷たい声で、梓が言った。少しざわついていたはずの周りも、シンと静かになっていた。
「アンタ、潰すよ?」
「……言いたいのはそれだけ?」
「…マジで潰す!」
「サーブはあげるよ」
前髪をまとめゴムで縛り、邪魔にならないようにピンで止める。見えていなかった緑の瞳が、赤也を捉える。
「っ、」
「……さぁ、遊ぼうか」
にやりと馬鹿にするような笑みを浮かべて、梓はラケットの先端を赤也に向けた。