Sky is the limit! | ナノ

 

あの後何時間にも及ぶ枕投げをして、みんな汗をかいたので昼食前にお風呂に入りサッパリとした。昼食も相変わらず美味しかった。

「それでは、閉会式を行います」

氷帝の榊監督の言葉で、今まで騒がしかった場が静かになる。各校の監督が挨拶をして、その次に各校の部長達がそれぞれに挨拶をする。私も拍手をしながら聞いていたら、最後に挨拶をした幸村くんとばっちりと目が合い、微笑まれる。

「じゃあ最後に、梓ちゃん」

「え、は?」

「何か一言でも良いから。ほら」

戻ってきた幸村くんに背中を押されてみんなの前に出たものの、私は挨拶する事なんて特にないはずだ。いや、みんなにはいろんなものを貰ったのだが、それは心の内に秘めておきたい。

「えっと・・・んー・・・」

思いつく話題がなくてどうしようかと悩んでいたら、オサム兄と目が合う。あ、



「 Sky is the limit! 」



それだけ言ってお辞儀をしてみんなの列に戻る。大体の人は意味を理解したのか、笑顔を向けてくれているが、どうやらわからなかった人も居るみたいだ。現に切原くんが眉を寄せて考え込んでしまっている。

「では、これにて閉会式を終わります。行ってよし!」

ビシッと決められた榊監督のポーズに若干笑いそうになったがなんとか堪え、すでにまとめてあった荷物を持ちロビーへ向かう。短い期間だったけど、楽しかったな、なんて思いながら歩いていると切原くんに肩を叩かれた。

「なに?」

「さっきのどういう意味なんっスか?」

「・・・ああ、あれね。深い意味はないよ。ただ、限界は無いんだってこと」

そう伝えれば未だにピンと来てないのか難しそうな顔をしている。私は苦笑いをしながらどうしようかと考えていたら、少し遠くの方からオサム兄の呼ぶ声がして、視線を移せば四天宝寺中のみんなはすでにバスに乗り込んでいた。

「オサム兄!」

「梓ちゃん、帰りは立海のみんなと一緒でええよな?」

「え?あ、うん。そうだね」

「ほな、幸村くん。よろしゅうな」

「わかりました」

「梓ちゃん、またな」

「姉ちゃん!大阪にも遊びに来てぇな!」

窓から身を乗り出してる遠山くんを白石くんが怒りながら引っ込め、四天宝寺中のバスは出発した。まあオサム兄にはまた会うだろうし、それほど寂しいとは思わないが、四天宝寺中のみんなとはいつ会えるのかわからないとなると、やっぱり少し寂しい気がする。

「梓ちゃん、俺たちも帰るよ」

「あ、うん」

幸村くんに促されバスの方を見れば、入口のところには全員が集まっていた。そこに行けば青学と氷帝のみんなも、またな、とか声を掛けてくれて、少しだけうるっと来た。

「それじゃあ、お世話になりました」

「梓さん、出発しますよ」

立海のみんなが乗り終わり、最後に青学と氷帝の人に挨拶をしていたらバスの中から柳生くんに呼ばれる。急いで中に乗り込めば、どうやらパーティー席のようになっていたらしくみんな笑顔で迎えてくれた。

「ほら、早く座れよぃ」

グイッと腕を引かれて丸井くんの隣に座った所でバスは動き出した。最初こそはわいわいとトランプをしたりしていたが、次第に心地良い揺れに負けて眠ってしまった。



「梓ちゃん、着いたよ」

「・・・ん、」

体を揺すられて目を開ければ幸村くんのドアップ。思わず後ろに後退りしそうになるも、座席の背もたれがあってそれ以上は離れられなかった。

「精市、梓が困っている確率93%だ」

「ああ、ごめんね」

「いや・・・大丈夫」

よく周りを見たらすでに私たち以外の人は外に居るらしい。窓の外は見慣れた立海の正門だった。ああ、本当に終わっちゃうんだな。

「一人で帰れるか?」

「あ、平気です。短い間でしたけどありがとうございました」

「今更だろぃ!」

「プリッ」

「また俺と試合してくださいっス!」

「またな」

「お気をつけて」

どうやらみんなはこの後、まだ少しだけ練習をするらしいため、私一人は帰ることになった。正門で別れの挨拶を済ませ、みんなに背中を向けて歩き出す。もうすぐ家だというところまで来て、ようやく実感する。

「帰って来たんだ・・・」

たった数日の短い間だったけど、私にはすごく長く居たような気がする。これからまた、みんなが居ない生活に戻るのかと思うと、少しだけ気分が落ち込んだ。

そんな私を馬鹿にするかのように、どこかでカラスが鳴いた。




Sky is the limit!




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Sky is the limit
=空は限界の高さ
=限界は無い!


  

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