Sky is the limit! | ナノ

 

今日も日差しが強くて、思わず倒れそうになる。まあ私なんかが倒れるわけにはいかないんだけど。だってみんなはこんな炎天下の中走ったりしてるわけだし。ガラガラとドリンクとタオルを運んでいるだけとはいえ、薄っすらと汗が滲む。

「・・・っはー、」

一度目のドリンクを運び終え思わず息を吐く。別段重いわけじゃないんだが、何分この日差しだ。

「よお、梓」

「?あ、跡部くん。お疲れ様です」

ドリンクを指定の場所に置き終えたタイミングで跡部くんに話しかけられた。それから跡部くんは自分でドリンクを取りタオルで汗を拭いている。うん、最初に会った時とはまるで別人だ。

「アーン?なんだ、俺様の美貌に見惚れたか?」

「まさか」

「・・・ククッ、あかん。梓ちゃんやっぱ面白すぎるわ」

跡部くんがあまりに変な冗談を言ってくるものだから即答したら、第三者の低音ボイスが聞こえた。視界にその人物を捕らえると、忍足くんはドリンクを手に取り、貰うで、と言ってからドリンクに口をつける。何というか、忍足くんって中学生の声じゃいないよね。

「忍足、なんでテメーがここに居るんだよ」

「なんや休憩もあかんのかいな?」

「ちっ、勝手にしろ」

ニタニタと笑う忍足くんとは対照的に跡部くんはイラついてるようだ。現に今だって舌打ちしたし。私はどこかへ行った方が良いのかと迷っていたら、跡部くんと目が合ってニヒルに笑われた。

「その前髪うっとおしいんじゃねーの」

「へ?」

「あ、俺もそう思うわ。梓ちゃん目に入ったりせぇへんの?」

「そう、ですね・・・確かにちょっと邪魔かもしれませんね」

「ふーん・・・」

それだけ呟くと跡部くんは黙り込んでジッと私の顔を見る。なんだろう、とてつもなく嫌な予感がするような気がするんですが、どうか気のせいでありますように。と心の中で願っていたのにも関わらず、跡部くんは悪徳業者の如くニヤッと笑った。

「よし!その前髪バッサリ切ろうじゃねーか。アーン?」

「えぇ!?」

「跡部にしては珍しくまともな事言うたなぁ」

「じゃあ、今夜切るからな。逃げるんじゃねーぞ」

「え、あ、ちょっ!」

「梓ちゃん、諦めた方がえぇで。跡部は一度ああ言ったら聞かんからな。ほな」

ニコリと忍足くんも笑って去っていったけど、一人取り残された私はかなり挙動不審だったと思う。誰か、今のは嘘だと言ってくれ!

  

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