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「あれ、梓じゃん」

「あー、丸井くん。ジャッカルくんも」

冷蔵庫に手をかけ開けようとしたところで背後から声を掛けられた。振り返ればガムを膨らませている丸井くんと付き添い?のジャッカルくんがいる。ぐっと腕に力を入れて冷蔵庫を開ける。

「なに、梓も腹減ってんの?」

「いや、飲み物貰おうかと」

「なんだよぃ、何か食べねーの?」

「そんなにお腹減ってないし。ジャッカルくんもスポドリ飲む?」

「おう。悪ぃな」

「いえいえ。どぞー」

「サンキュ」

「え、俺には?」

「自分で取れば?」

「梓酷ぇ!」

冷蔵庫の前から退けば丸井くんはブツブツと文句を言いながら冷蔵庫の中を漁る。そんな姿をジャッカルくんと一緒に微妙な顔で見ていた。だって、そりゃ微妙な顔にもなるだろうよ。仮に勝手に食べたりしていいと言われたとしても私ならそんなに漁るように冷蔵庫の中を見ないだろうし。丸井くんってば

「ホント遠慮知らずだよね」

「文句あんのか」

「イエ、ございません」

くるりと振り向いた丸井くんは棒アイスをくわえていた。さっきの噛んでたガムはどこに行ったんだというのは野暮な質問なんだろうか。ジャッカルくんもいつも丸井くんの相手をして大変なんだろうなぁ。キュ、とペットボトルのキャップを開けてスポドリを飲む。喉が潤うのを感じながらジャッカルくんに視線を移せば、すでに1本を飲み干していた。なんてこったい。

「おい梓」

「なんですか丸井くん」

「お前もこれ食うか?」

ずい、と差し出されたのはどこにあったのかワンホールのケーキ。首を横に振り拒絶を示せば、丸井くんは唇を尖らせてから冷蔵庫を閉め、フォークを手に取り誰も居ないテーブルへと向かう。ジャッカルくんもその後を当たり前のようについて行き隣に腰掛ける。

「じゃあ、私帰るね」

「は?おいどこ行くんだよ」

「だから部屋に帰るんだってば」

「まだ居ればいいだろぃ。何が悲しくてジャッカルとケーキ食わなくちゃいけねーんだよ」

「・・・ハハッ」

・・・どうしよう、ジャッカルくんがすごく不憫だ。というか今のジャッカルくんの何もかも諦めたような笑い声を聞いたら帰れるわけないじゃないか。軽く息を吐き出してから、私もジャッカルくんの隣に腰をおろそうとしたら、丸井くんから不機嫌な声で呼ばれる。一体何なんだ。

「俺の隣に座れよぃ」

「・・・はあ、」

「悪いな、梓」

「いや、ジャッカルくんは悪くないから」

仕方なく丸井くんの隣へ移動したら、先ほどとは打って変わってニコニコとした表情でケーキを食べ始める。てか、これ一人で全部食べるのかな?うえ、気持ち悪くなりそう。そんな事を考えながら見ていたら、私の目の前に一口分のケーキが刺さったフォークを突きつけられた。

「ん」

「・・・え?」

「ちっ・・・だから俺が分けてやるって言ってんだよぃ。それくらい気づけよな」

「え、いや、良いよ。私なら大丈夫」

「あ?なに、俺のケーキが食えないって言いたいわけ?」

「・・・」

えぇー・・・丸井くんどうしちゃったの。丸井くんってこんな性格だったっけ?なんかチンピラ風のヤンキーみたいなんですけど。それと丸井くんのケーキがじゃなくて跡部くんちのケーキだし。助けてほしくてジャッカルくんに視線を送るも、苦笑いしか返って来なかった。ちくしょう!

「ほら、」

ずい、と口の前まで突きつけられたので仕方なく口を開けるとグイッと詰め込まれる。もぐもぐと噛んでから飲み込めば、どうだ、とどや顔の丸井くんと目が合った。

「・・・美味しいね」

「だろぃ?でももうあげねー」

パクパクとケーキを口の中に放り込んでいく丸井くん。うん、良い食べっぷりだと思う。ただ見てるとクリームを食べ過ぎて、うえっ、てならないのかが少し心配だった。

  

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