Sky is the limit! | ナノ
今日も朝から元気にみんなは練習をしています。私はというと、ドリンクとタオルを出し終わり強い日差しに耐えられなかったので木陰に避難中です。
「あっつい・・・」
パタパタと服の裾を扇いでみるも大して意味はなく、むしろ動いているという事で先程よりも体温が上がっているような気がする。よくこんな暑い中テニスが出来るものだ。暑くてあまり動かない頭でぼんやりとテニスコートで練習している彼らを見ている。
「ひゃあぅ!」
「・・・ちっす」
「ええええ、越前くん!」
突如首筋に触れた冷たいものに思わず変な声を上げてしまったが、どうやら越前くんが持っている缶ジュースのファンタが原因らしい。
「暑いっスね」
「そうだね」
「どぞ」
「・・・ありがとう」
二本持っていたうちの一本を私に渡してくれて、越前くんも隣に座り込みファンタを飲み始める。プシュッという音を聞きながら私もファンタを口に含めば、シュワシュワと口の中で炭酸が広がる。火照った体の体温を下げるのには冷たい飲み物は良いな、なんて考えていたら越前くんがにやりと笑ったのが見えた。
「飲みましたね」
「え?」
「じゃあそれの飲み終わったら俺と試合してください」
「は?」
「だから、俺と試合しましょうよ」
してやったり顔の越前くんの言動がいまいち理解できずに居たら、ボソリと「約束したじゃないっスか」とまるで拗ねたような声色で呟く声が聞こえる。約束、約束・・・。
「あ、」
「思い出してくれたっスか?」
「うん、ごめんごめん。そうだったね」
そういえば私が暑さでやりたくないと言ったのだった。今日も日差しが強いが、そんな事を言っていたらきっと私は夏に運動をする事を一生放棄しそうだ。ゴクゴクとファンタを飲み干せば、越前くんも飲み終わったらしく嬉々としてテニスコートへ向かう。そんな越前くんの様子が変だったのか、ほとんどの人がコートの周りをぐるりと囲んでいる。
「梓ちゃん」
「オサム兄。どうしたの?」
「ほら、ラケットや」
「!・・・ありがとう」
「怪我せんよーにな!」
ニッと笑い、頭をぐちゃぐちゃに撫でられる。背中をグイッと押されてコートの中へ入る。次第に高鳴る鼓動が、妙に心地よかった。
「じゃあ、いきますよ」
「オッケー」
越前くんのサーブから始まるのだが、どうやら早々にツイストサーブを出してくるかもしれない。と言うか、
「ッ、危ないなぁ」
「全然余裕じゃん」
顔面に向かってバウンドしてきたボールを打ち返せば楽しそうな越前くんの声が聞こえる。あぁ、やっぱりテニスって楽しい。