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朝方、こっそりと仁王くんの部屋に侵入すればベッドの上で少しだけ苦しそうに寝ている仁王くんが目に入る。額には汗が滲んでいたため、一度自分の部屋に戻り小さなタオルを手にまた仁王くんの部屋に向かう。音を立てないように部屋の中に入り、洗面台でタオルを濡らしてベッドに近づく。額の汗を起こさないようにゆっくりと拭っていれば、ピクリと仁王くんの眉が動く。

「・・・・・・ん・・」

「あ、ごめんね。起こしちゃったかな」

ゆっくりと持ち上げられる目蓋に、手を止めできるだけ小さな声で話しかければ仁王くんと目が合う。熱にうなされてるせいかやけに色っぽく感じる。

「・・・んで、梓が居るんじゃ」

「ちょっと様子を見に来ただけだよ」

そう言えば仁王くんは罰が悪そうに視線を逸らした。なんていうか、初対面の時の印象と違いすぎてなんとなく面白い。まあ本人にそれを言ったら怒るのは目に見えているから言わないけど。再度タオルで額の汗を拭おうと触れたら、仁王くんはビクリとしたが拒否するわけでもなかったのでそのまま拭く。

「・・・汗かいてるみたいだから、動けるなら着替えてね」

額の汗を全て拭き終わりその場を離れようとすれば、なぜか仁王くんに手を掴まれる。どうかしたのかと言う疑問を表すように首を傾げたがなぜか何も喋らない。見つめ合うこと十数秒。

「仁王くん?」

「・・・なんでもなか。さっさと出て行きんしゃい」

「いや、手を掴んでたのは仁王くんだからね?まあ良いや。ちゃんと安静にしててね」

「・・・ピヨッ」

最後の意味の分からない発言をした後に仁王くんは手を引っ込め私に背中を向ける。とりあえず昨日よりは元気そうなので安心した。お大事に、と声をかけてから部屋を出る。ドアを音をあまり立てないように閉め朝食のため食堂へ向かおうと方向転換した瞬間に、何かにぶつかる。

「やぁ、梓ちゃん」

「・・・不二くん」

「仁王はどうだった?」

「あ、昨日よりは元気そうでした」

「そう、良かったね」

そう言って綺麗に笑う不二くん・・・いや、表情が笑ってるのは大体いつもの事なんだけどね。一体なぜここに居るのかが若干気になったが、聞くのも失礼かなと思っていると頭の上に手を置かれる。

「・・・あの、不二くん?」

「うん、偉い偉い」

まるで幼い子供をあやす様に頭を撫でられる。えーっと、状況がいまいち理解出来ないのは私だけではないはず。置いてけぼりな私を他所に、不二くんは満足したような表情で「またね」と残して去っていった。

「えぇー・・・」

どうやら私は不二くんを理解するにはもう少し時間がかかりそう、もしくは一生理解出来ないと感じた。

  

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