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「梓」

「あ、真田くん。どうかした?」

食堂に帰れば勉強会はお開きになっていたのか、真田くん以外の姿は見えない。

「うむ、仁王はどうだったか気になってな」

「・・・ちゃんと薬飲んだし大丈夫じゃないかな」

「そうか・・・すまない」

「なんで真田くんが謝るんですか?」

「仁王が迷惑をかけたからな。全く風邪を引くなんてたるんどる証拠だ!」

「ははは・・・」

むっと眉間にしわが寄ったが、恐らく真田くんも心配をしているんだろう。そう思わないと仁王くんが不憫だ。ふと先程まで使っていたテーブルの上を見れば、私の広げていたノートやプリントが綺麗にまとめられていた。おぉ、誰か分かりませんがありがたい。

「あ、もしかして真田くん?」

「む、何がだ?」

「私の片付けてくれたの」

「・・・いや、それは俺ではなくジャッカルだ」

「あ、そうなんだ」

なるほど、ジャッカルくんか。納得。やっぱりジャッカルくんってばいい人だな。思わずにやっと笑ったら真田くんが若干引いた。

「それよりも、これからずっとその髪型で居たらどうだ?」

「・・・髪型?」

「あぁ、その前髪の事だ。いつもの状態だと鬱陶しいだろう」

そこでようやく気がついた。前髪を上げたままだったということを。

「〜っ、」

急いでつけていたカチューシャを取れば視界が狭くなる。その瞬間真田くんの眉間によりしわが寄る。この微妙な空気をどうしようかと悩んでいれば、背後から「おや?」と声がした。

「梓さんと真田くんではありませんか」

「柳生か。何、なんでもない」

後ろを振り返ればにこりと微笑んでいる柳生くんが居た。腕を組んでいる真田くんと、笑顔を絶やさない柳生くんと私というなんとも言えない三人組みが出来た。

「梓さん、仁王くんに気づいてくれてありがとうございました」

「いや、そんなお礼を言われるほどの事じゃないよ」

「いえ、梓さんが気づかなければ仁王くんはきっと何でもないで済ましていたでしょうし」

苦笑いをする柳生くんだけど、本当に仁王くんのことが分かっているんだなと感じた。流石ダブルス。その後すぐに二人と別れて部屋に戻った。

  

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