Sky is the limit! | ナノ
前髪が上がっているのも、問題を解く内に気にならなくなっている。柳くんほどではないが解答欄にシャーペンを走らせて宿題を終わらせていく。いつも家でやる時は音楽を聴きながらだったりで集中力が分散しているのだが、今日は静かな分集中して出来た。
「終わった」
ふぅ、と一息ついて最初の宿題が終わる。因みに社会だ。私はどうしても社会だけは好きになれそうにない。その後もプリントや冊子になっている宿題を片っ端から解いていく。私が後1教科で終わる頃にはすでに柳くんは自分の宿題を終わらせ、恐らく問題児なのであろう切原くんと丸井くんの面倒を見ている。カリカリとシャーペンの走る音と柳くんの解説が空間を支配している中で、私もようやく終わった。
「・・・」
握っていたシャーペンをテーブルの上に置けば、丁度幸村くんと真田くんも開いていたプリントや冊子を閉じた。私も開いていた冊子を閉じて片付ける。
「梓ちゃんも終わったの?」
「えぇ、一応は。幸村くんも?」
「うん、終わったよ。そうだな、##name2##ちゃんはジャッカルと仁王に付いてくれないか?」
「・・・付く?」
「えっと、わからないところとか教えてやってくれってことなんだけど」
「・・・わかりました」
「ありがとう、助かるよ」
じゃあお願いねと残して、幸村くんは切原くんと丸井くんのところへ行った。二人はすでに柳くんと真田くんに囲まれていた。若干かわいそうな気がしなくもないが、何も言わないでおこう。隣に座っているジャッカルくんを見れば特にわからない問題がないのか、確実に解答欄を埋めている。その隣の仁王くんを見れば、つまらなそうにシャーペンをクルクルと回している。
「・・・仁王くん、わからない問題でも?」
「そうじゃのぅ・・・」
ぼんやりとした目でシャーペンを回していた仁王くんが、私を見る。それでもなお、未だぼんやりしているように見える。まさか体調でも悪いんじゃないんだろうかと考えるも、私なんかがでしゃばって言う事じゃないわけだし。とりあえず、なんか仁王くんからの視線が痛い。
「梓はここで好きな奴とかおらんのか?」
「・・・・・・は?」
「じゃーかーらー、好きな奴じゃよ」
決して大きくはないが、確かに私の耳に仁王くんの言葉は届いた。だがしかし、脳内の処理が間に合わない。えっと、なんだ、えーっと。この合宿に参加してるメンバーで、好きな人・・・?やっと理解を始めた脳内が、また新たに会議を始める。こいつの頭は大丈夫か、と。
「えーっと、仁王くん?」
「なんじゃ?」
「熱でもあるの?」
「?なかよ」
「そう?」
お互い首を傾げるような形になり、なんともいえない空間に包まれる。こんな時はどうしたらいいんだろうか。今までこんなに誰かと話すこともなかったせいで対処の仕方がわからない。
「仁王くん、梓さんが困っていますよ」
「プリッ」
助け舟を出してくれたのは仁王くんの隣に座る柳生くんだった。流石ダブルスのパートナー。苦笑いしながら大丈夫ですかと問いかけてくれる柳生くん。大丈夫、と答えた後に柳生くんは仁王くんに向き直ったが、やはり彼がどこかおかしいのを感じ取ったのか額に右手を当てる。
「っ、仁王くん貴方・・・!」
柳生くんの反応からわかるように、どうやら仁王くんは熱があるようだ。だからさっきから変だったのか。どれくらいなものなのかと思い心の中でごめんねと謝ってから仁王くんの額に手を当てる。
「え、」
なんだこの熱の高さは・・・!これでよく平気な顔していたもんだと感心する。まあ感心している場合ではないのだが。
「柳生くん、仁王くんを部屋まで運んでくれる?私は跡部くんに薬ないか聞いてくる」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえ、それでは」
立海のテーブルを離れる際に柳生くんが立海のみんなに説明・・・まあ恐らく聞いていたと思うが、説明をしているのを後に氷帝のテーブルへ向かう。
「跡部くん、」
「アーン?梓じゃねぇか、どうした」
「それが、仁王くんが熱を出してしまったみたいなので、お薬ありませんか?」
「・・・わかった、すぐに手配する」
「ありがとうございます」
お辞儀をしたら、それくらい容易いと返ってきた。さてと、仁王くんは大丈夫だろうか。