Sky is the limit! | ナノ

 

まだ30分にも経ってないというのに、食堂には全員が揃ってわいわいと盛り上がっていた。辺りを見回してオサム兄を探すも姿は見つからず、謙也くんは四天宝寺のところへ行ってしまったので入口横で壁に寄りかかりぼんやりとみんなを見る。思うことがあるとすれば、

「「みんな髪色派手すぎ」!」

「だろうと思ったよ」

視線をみんなからずらせば、青学の乾くんと目が合う。いや、眼鏡が反射して目なんか見えないけど。右手にはシャーペン、左手にはノートを開いて持っている。

「・・・なんでわかったの?」

「そういう顔をしていた。データ通りだ」

ふふん、と少し自慢するように乾くんは笑った。しかしいつの間にデータを取られていたのか・・・というか私のデータなんか取ってどうするつもりなんだろうか。そんな私の思考とは裏腹に、乾くんは質問しても良いかと言って、私の答えも聞かずに質問を次々と投げつけてきた。大抵はプロフィール的なものばかりで、本当にこんなデータをいつ使うのかという疑問ばかりが浮かんでは消えていく。

「じゃあ最後に、その前髪は目を隠すためか?」

「・・・まあ、そんな感じです」

「そうか。俺は梓の目は結構好きだがな」

「!」

「少なくとも、ここに居る奴らは良くも悪くも素直だからな。気味悪がったりしてないさ」

「あったり前だろぃ!てか乾なに一人でカッコつけてんだよぃ!」

「そうじゃき、あんま気にしなさんな」

「そうっスよー!梓さんの目よりも先輩たちの髪色の方がすげぇし」

「赤也、それは俺らに対する宣戦布告かい?」

「ち、違うっスよ!幸村部長は普通っス!」

「ワイも姉ちゃんの目の色好きやで!」

「まあ、似合ってるんとちゃいます?」

いつの間にか、周りにはこの合宿に参加しているであろう全員が集まっていた。しかも、話の内容からすると今までの流れを全部聞いていたような気がしないでもない。かなり恥ずかしいけど、少しだけ心が温かくなって、思わず口元が上がる。

「良かったな」

「・・・柳くん、」

「梓は少し周りを気にしすぎだ。もっと自由にやりたいことをやれば良い」

「・・・」

「それに立海には丸井や仁王のような頭の奴が居るからな。目くらいじゃあまり目立たないだろう」

「、ありがとう」

「ふ、気にするな」

ぽんっと頭の上に置かれた手が、とても優しかった。

「梓ちゃーん、宿題持ってきたでって・・・なんや、みんなして梓ちゃんの周りに集まって」

「オサム兄・・・」

「よし、お前ら!今から宿題を片付けるぞ、アーン?」

跡部くんの一言で、ぞろぞろと学校ごとに集まってテーブルについた。私もオサム兄から宿題を受け取り、どこか一人で座れる場所を探す。

「何してんだよ梓」

「あ、ジャッカルくん」

「俺らとやろうぜ」

「でも、」

「ほら、みんな待ってるからよ」

グイッと腕を引かれて立海のみんなが座っているテーブルに行けば、幸村くんに「遅いよ」と言われた。なんだか、泣きそうです。

  

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