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お風呂に入ってサッパリしたあとで食堂へ向かえば、すでにほとんどの人は揃っていた。今日はバイキング形式なのか、みんなそれぞれ食べたいものをお皿に盛っている。それはもう山盛りに盛る人も居るくらいに。

「あ、梓・・・」

「丸井くん・・・その量を一人で食べるんですか?」

「当たり前だろぃ」

丸井くんのトレーの上には大量に盛られたご飯とおかずの山がある。見てるだけでお腹一杯になりそうな気さえ起こさせてくれる。

「梓も早く取って来いよ。席なら取っとくから」

「え?でも、」

「ほら、さっさと行けよぃ!」

ドンッと、さながら突き飛ばされるような形で背中を押されご飯を取りに行く。今日も美味しそうだ。思わずごくりと生唾を飲み込んでから、トレーを手に取り食べたいものをポイポイと盛り付けていく。

「梓さん、そんなに食べるのですか・・・?」

「え?」

様々なおかずに目を奪われていたら、不意に前方から話しかけられた。顔を上げれば苦笑いをしてなんとも言えない顔の柳生くんが立っていた。それから自分の手元を見れば、先程の丸井くんと同じくらいの量を盛り付けてしまっていた。知らず知らずのうちにこんなに取ってしまったのかと思うが、これくらい食べきれない私じゃないのだ。

「美味しいものは食べられる時に食べておかないとね」

「・・・そうですね」

「柳生くんはもう取ったの?」

「えぇ。ただドレッシングを取るのを忘れてしまったので来たのですが・・・梓さんがそんなに食べるとは思いませんでした」

「・・・まあ、そうだよね」

普通にこの量を女子が食べきれるとは思わない。だが私は違うのだ。美味しいものは、それこそブラックホール並みに食べると以前オサム兄から聞いている。そしてドン引きされたことも。

「もうすぐ取り終わるから柳生くんは行ってて良いよ」

「いえ、持ちますよ」

「・・・紳士だね」

ポツリと呟けば柳生くんは笑って返した。少し急いで残りの食べたいものを盛り付けてしまえば、本当に柳生くんはトレーを持ってくれた。お礼を言えばたいした事じゃありませんよと笑った。

「おー・・・梓そんなに食べんのかよぃ?」

「悪い?」

「いや、悪くねぇけどよ・・・。俺の量とほとんど一緒じゃねーか」

「ついつい手が伸びてしまって」

「まあ良いや。座れよ」

ガタガタと丸井くんが隣のイスを軽く引いてくれたので、座れる幅に自分でイスを引いて座る。テーブルの端っこなので丸井くん以外に隣は居ない。しかし目の前は真田くんだ。何か粗相をしたら裏拳されるんじゃないかと内心ビクビクしている。私が揃ったのを確認した幸村くんの号令で、立海with私の夕食がスタートした。

「うむ、梓のはバランスよく取られているな。それに比べ・・・丸井、なんだその肉だけの皿は!」

「まあ落ち着け弦一郎」

食べ始めて1分も経たない内に真田くんが喋りだした。そして怒りの矛先は丸井くんに行くが、隣に座っていた柳くんが真田くんを制する。柳くんは綺麗に皿に盛り付けてあるものを優雅に食べていた。その隣の幸村くんも然り。真田くんは日本人らしい魚に味噌汁などのおかずがトレーにのっている。

「しかしだな、スポーツ選手たるもの健康管理もしっかりせねばならんのだ」

「・・・一理あるな。しかし今日ぐらい良いだろう」

「柳・・・!」

丸井くんは庇ってくれた柳くんを目を輝かせながら見ている。お箸で掴まれていたお肉が皿の上に落ちる。そんな光景を見ていたら、丸井くんの横の方から肉が大量に盛られている皿へと箸が伸びる。丸井くんは全然気づかないのか、柳くんに感動している。背中を反らして丸井くんの後ろから誰が取ったのかを確かめようとしたら、ばっちりと目が合った。

「・・・」

「・・・」

隣に座っていたのは、仁王くんだったらしく、私と目が合えば人差し指を口に当てシーっとしてきた。まあ肉の一枚や二枚減ったって気づかないだろうとその場は頷いて自分の食事を再開した。

「あーっ!俺の肉がねぇ!」

「っ!」

隣からの突然の大声に肩が跳ね上がり、顔を上げれば真っ先に柳くんと目が合い笑われてしまった。思わずムッとしたが、隣から丸井くんの叫び声が聞こえ思考を遮られる。

「仁王、お前だろぃ!」

「さあ、知らんのう」

「てっめ・・・!」

「プリッ」

ガタリと席を立って逃げた仁王くんを丸井くんが追いかけていった。なんとも騒がしい夕食である。

  

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