Sky is the limit! | ナノ
「――――えー、学生の本分を忘れずに……」
校長の話が長いのは、多分全国共通だと思う。特に長期休みの始まりと終わりの長さなんかは、一度は誰かが倒れるのに遭遇したことがあるだろう。今もまさに、校長の話が長々と語られている。堅苦しい挨拶みたいなのとかさ、ぶっちゃけどうでもいいし。てか聞いてる人居ないだろ。視線だけを動かしていると、赤い髪の男子が立ったまま器用に寝ていた。すげぇ。
「―――以上、くれぐれも怪我のないように」
解散、という校長の合図で、全校生徒が一斉に出入口へ向かった。因みに立海の終業式などは、朝にクラスでHRを済ませるため、この全体での集まりが終わった段階で、自由に帰れる。
私もその流れに乗って教室へ。鞄には先週置き勉していた教科書が入っているせいか微妙に重い。誰と挨拶を交わすわけでもなく、真っ直ぐ家に帰った。
「ただいま」
「あら、おかえり。オサムさんから電話あったわよ」
「…オサム兄から?」
「電話しときなさい」
「んー」
オサム兄か…確か今は四天宝寺ってとこに居るんだっけ?それにしてもなんだろ…。あ、夏休み大阪に来ないか、とか?
携帯のメモリから“オサム兄”と登録してあるのを呼び出して、電話を掛ける。5コール目が鳴り終わって、出れないのかと電話を切ろうとしたら、慌ただしく電話が繋がった。
「梓ちゃん?スマンなぁ、気づかんくて」
「いえ、大丈夫です。それより私に何か用があるって聞いたんですけど」
「あ、せやった。梓ちゃん明日から夏休みやろ?ちょっと手伝ってほしい事があんねん」
「はぁ、何ですか?」
「頼まれてくれんの!?」
「……暇ですし」
「流石梓ちゃんやわ!じゃあ詳細はメールするわ」
「はいよ」
電話を切って1分もしない内にオサム兄からメールが来た。…オサム兄、メール準備してたな。
「えーっと、なになに…1週間分くらいの着替えと、明日、迎えに来る!?え、明日?うわ、マジでか。おかーさーん!」
お母さんにメールを見せたら、笑顔で迷惑掛けないようにねと言われた。ていうか、一体何の手伝いなんだろ。
夜に準備をして、いつもより早めに布団に入った。