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白石くんに捕まって四天宝寺のコートに来たのだが、みんな練習をする気がないのか周りに集まって話をするばかり。

「・・・練習しないの?」

「ちゃんとするで」

ニコリと笑った白石くんに一刀両断された。しかしみんな在り来たりな練習メニューに飽きたのか文句を言っている。特に遠山くんが。しかしそれを聞いて白石くんが不気味な笑みを浮かべたのが横目で見えた。

「そのために梓ちゃんを呼んできたんやろ」

その顔はまさしくどや顔というか、してやったりな顔というか。おかしいな、白石くんってこんなキャラだったっけ・・・?肩をがっしりと掴まれて逃げ道がなくなれば、遠山くんが輝かんばかりの目で私を見てきた。

「なにするん!?」

「え、いや・・・私に言われても」

「えー!」

元気良くえー!と言われても私には何も出来ないのだから仕方ないじゃないか。ぼんやりとどこか他人事のように考えていたら、小春ちゃんと目が合った。綺麗にウィンクを成功させてしまいには私に投げキッスをしてきたもんだから隣にいた一氏くんが浮気か!って叫んだ。

「なぁ梓ちゃん」

「・・・なんでしょうか」

「俺らと試合せぇへん?」

「あ、ワイも試合したい!」

ニコリと笑いながら白石くんは言った。そして続けて遠山くんがテンション振り切れた感じで腕をグイグイと引っ張りコートまで連れて行こうとする。ていうか、力強っ!

「あの、ちょ、私試合なんて」

「なら梓ちゃんは動かんくてえぇから」

「はい?」

「せやから、俺らが梓ちゃんの打った球を梓ちゃんの居る場所に返してラリーを続けるってことでどや?」

「・・・まぁ、それくらいなら」

そう呟けば白石くんのラケットを持たされてコートの中央に立たされる。因みにボールは1球のみで、相手が変なところに返球した時点で終了という簡単なラリー。最初に入ってきたのは意外にも財前くんだった。コートの外では遠山くんが暴れていて石田くんがそれを抑えてるというなんとも奇妙な光景になっている。

「それじゃ、いくよ」

ラケットを強く握りなおしてから財前くんが立っている方向とはま逆の方向へ打ち出す。何回かこんな簡単なラリーが続いたので、ちょっとだけ意地悪をしてみようとドロップショットを打てば少し驚いた表情になった財前くんが見えた。そして財前くんが打ったボールはギリギリ私の手の届く範囲外で、フェンスに吸い込まれていった。

「ごめんね」

「いや、しゃーないっすわ。それにしても意外と重い球打つんっすね」

「・・・そう?」

自分では特に意識したことなかったのだが・・・。その後順番にやっていき、全員が終わる頃には汗が凄い事になっていた。


  

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