Sky is the limit! | ナノ
私は暑さに弱い。最近なんて炎天下の下、何時間も居るなんてことがなかった為余計にしんどい。のろのろと水道のある場所まで行き、水を飲む。
「生き返るわー」
ついでに顔もバシャバシャと洗ってから気づく。タオル持ってないや。仕方ないから服の袖で拭おうとしたらその腕を掴まれた。
「良ければどうぞ、梓さん」
「・・・ども、」
微笑みながらタオルを手渡してくれたのは、同じ学校の柳生くん。ふわふわなタオルで顔を拭けば更にスッキリした。
「無理はなさらないでくださいね」
「あー、大丈夫です」
新しいタオル貰ってきます、と言ってその場を去ろうとしたら再度腕を掴まれた。若干掴まれた腕が痛い。まだ何か話すことがあるのだろうかと向き直ってみても、一向に話さずに、視線まで彷徨っていた。
「・・・?」
私は柳生くんと話したこと、ましてや近くで見たことなんかない。でも、この人は本当に柳生くんだろうか。なんかこう、もやもやとした感じが胸に突っ掛かる。腕も離してくれるわけでもなく、ただ無言で向き合っていた時だった。
「仁王くん!」
「・・・仁王?」
少し離れたところから走ってくるのは、私の目の前に居る人と瓜二つ。しかし、今走ってくる人は、目の前の人を仁王くんと呼んだ。
「また勝手に私に成りすまして・・・!」
「・・・すまん」
「早く変装を解いてください。練習しますよ、仁王くん」
どうやら私に話しかけてきた人は仁王くんで、この怒ってるほうが柳生くんらしい。この置いてけぼりな状況をどうしたら良いのかわからず立ち尽くしていれば、視線で仁王くんの手を辿り、私と目が合った。
「梓さん・・・仁王くんが迷惑をかけてすみません」
「あ、いえ。むしろタオルを貸してくれたんで」
「そうだったんですか」
ふんわりと微笑む柳生くん。ふと視線を戻せば、若干眉間にしわの寄っている仁王くんが居た。心なしか腕を掴んでいる力がほんのりと強くなったような気がする。一体何なんだ。
「やぎゅ、練習に戻るぜよ」
パサリとウィッグを取って、仁王くんは背を向けた。その後を追うように柳生くんもそれでは、と言い残して歩き出す。本当になにがしたかったんだと思いつつ二人の背中を見ていれば、仁王くんが振り返った。
「・・・無理しなさんな」
「!うん」
まさか仁王くんに心配されるとは思わなくて、思わず口元が緩んでしまった。