Sky is the limit! | ナノ
朝食は和食で、白米に味噌汁に鮭。いたってシンプルだったが、なぜかいつもよりも美味しく感じた。食材が良いのか、大勢で食べるのが楽しかったのか。どっちにしろ、ご飯を美味しく食べれるならそれに越した事はない。
今日も朝から日差しが眩しい中、早々に練習が始まった。走りこみをした後に、青学の選手たちは私との練習をかけた1セットマッチの試合が始まった。因みに対戦相手はあみだくじで決まったそうだ。他の学校は各自練習をしたり他校の人達とラリーをしたりしている。
「まあ、私はドリンクとタオル運びなんですが」
よいしょっと言いながらドリンクが入った籠を持ち上げる。昨日と同じか、もしくはそれ以上に重たいような気がする。若干よたよたと歩きながらコートへ向かえば、青学のコートからバーニング!っていう声が聞こえてきた。うん、こんな声を出すような人なんていなかったような気がするんだけどなー。気になって急いでドリンクを置きにいき、青学のコートを覗けば、
「オラオラ、バーニングッ!」
「右クロスの確率、96%」
「・・・あれ、おかしいな」
ごしごしと目を擦っても、目の前の状況は変わらず。あれ、河村くんってこんなキャラだったっけ?おかしいな、もっと優しい感じだと思ってたのに。・・・なんか泣けてきた。
「ねぇ、なにしてんっスか」
「!越前くん」
横を見れば私より身長の低い彼が見上げてくる。河村くんのことを聞こうか迷っている間に、どうやら試合が終わったららしく、ラケットを持っていない河村くんと乾くんが私たちのところへ来た。
「あれ、梓ちゃん?」
河村くんに声を掛けられて思わずビクリと肩が震えたが、先程までとはまるで別人だ。一体なにが彼をあそこまで豹変させたのか・・・
「ラケットだ」
「・・・へ?」
「河村はラケットを持つと人が変わったようになるんだ」
眼鏡が反射して目が見えない乾くんが説明してくれた。私ってそんなに顔に出てたのか。これは失礼な事をしちゃったな。
「考えていそうな事はデータでわかる」
「・・・データ?」
「あぁ」
・・・どうしよう、関わりたくない。だってデータ取られるとか嫌じゃん。あ、だから試合の時も〜の確率〜%って言ってたのか。うわ、戦いにくそうな相手だ。
「何か用事かい?」
「へ、あ、いや、特には」
「そっか。練習に混ざりたかったら手塚に言えば多分できると思うから」
それじゃあ、と片手を挙げながら河村くんはどこかへ去っていってしまった。ラケットを持ってるときと変わりすぎだろっていうのは胸の内に留めておく事にする。乾くんも若干薄気味悪い笑みを浮かべてどこかへ行ってしまった。乾汁ってなんだ。
「・・・練習しないの?」
「しますよ」
帽子を少しだけ深く被りなおして、越前くんも練習へ戻って行った。