Sky is the limit! | ナノ
携帯から流れる音楽で目が覚める。時間を見れば6時ジャスト。一体誰がこんな朝早く目覚ましを掛けたんだとぼんやりと考えるが、まぶたが眠気に耐えられずにゆっくりと下りる。ふかふかのベッドで二度寝をしようと思った時、ドアが叩かれる音がした。
「梓ちゃーん!朝やでー!」
ドアを叩く音とオサム兄の声が聞こえてきて、まだ寝たいと叫んでいる体を起こしてのそのそとドアに近づく。ガチャリと鍵を開けた瞬間、ドアが自然と開く。
「オサム兄、私まだ眠い・・・」
「残念、オサムちゃんじゃないわよん」
「・・・はぁ?」
ずっと下に向けていた視線を上げると、そこにいたのはオサム兄ではなく、四天宝寺の二人組み。坊主で眼鏡をかけた人と、不機嫌そうに私を睨んでいる人。オサム兄の姿は本当になかった。
「え、は?」
「あぁ、さっきのオサムちゃんの声はユウくんがやったのよ」
ウィンクを綺麗に決めながら坊主頭の眼鏡さんが説明してくれた。恐らくユウくんという人は私を殺す気で睨んでいるようなこっちの人だろう。でも、なんで私こんなに睨まれてんの。寝起きのせいもあってか次第にイライラとし始めた時だった。
「小春ー、ユウジー、梓ちゃん起きたんか?」
廊下から聞こえてきた第三者こと白石くんの声が聞こえた。それからすぐにドアの影からひょっこりと白石くんが顔を覗かせ、目が合う。白石くんはにっこりと笑い、なんや起きてるやんと言った。
「・・・朝から何のご用ですか」
「もうすぐ朝食の時間やから、オサムちゃんが呼んで来いって」
「はぁ、それはどうも」
「さあさ、早く着替えちゃいましょ」
「小春ぅ!?」
くるりと室内へ向かされ背中をグイグイと押される。その後ドアの閉まる音がして、鍵がかかる音もした。ドアの前では「浮気か、死なすど!」と怒鳴り声が聞こえてくる。え、誰が浮気?
「ごめんねぇ、ユウくんってばいつもあんな感じなの」
「はぁ、」
小春、と呼ばれた彼はいそいそと洗面台のある場所へ私を押して運ぶ。こりゃ二度寝は無理かと諦めて顔を洗って歯磨きをしていたら、小春くんがどこから持ち出したのか櫛で私の髪を梳きだす。
「梓ちゃんって綺麗な髪してるのね。あ、私は金色小春っていうんよ。小春ちゃんって呼んだってや」
「・・・」
鏡越しにウインクをされた。うん、彼はなにを目指しているのだろうか。相変わらず部屋の中にはドアの叩く音と、確か一氏くんの声が耳障りなくらいに響いていた。
「そういえば、さっきのオサム兄の声ってどうしたの?」
歯磨きも終わり、のそのそとジャージに着替える。因みに小春ちゃんは別の部屋で待機中だ。
「あの声はユウくんよ。すごく似てたでしょ」
「うん、オサム兄かと思った」
「ふふ、それなら嬉しいわぁ」
ジャージに着替え終わって小春ちゃんのところまで行けば相変わらずニコニコと愛想の良い笑みを浮かべていた。部屋を出る為に小春ちゃんが鍵を開けた瞬間、ドアが勢いよく開き、一氏くんが小春ちゃんに抱きついてきた。・・・この二人って本当にダブルスのペアなだけなんだろうか。