Sky is the limit! | ナノ
ご飯も食べ終わり食後のお茶を飲んでいると、幸村くんの前に座っていた柳くんがどこからかノートを取り出している。パラパラとページを捲り、止まる。
「少しだけ、話しても良いか?」
ジッと柳くんに見られ・・・見えてるのかな?答えずに黙っていると、ゆっくりと柳くんの目が開いて、見えていると言った。思考が読まれたことに驚いていると、柳くんはシャーペンを片手に質問を開始した。あれ、おかしいな。話すって言ったのに。
「なぜ、この合宿に参加したんだ?」
「・・・オサム兄のお願いだから。まず合宿とか聞いてなかったし」
合宿、しかもテニス部なんて知ってたら多分来てなかっただろうしね。なにを書き留めることがあったのか、柳くんはシャーペンをノートに走らせる。
「あれほど才能があるのに、テニス部に所属しようとは考えなかったのか?」
「私なんかがテニスしてたらみんな驚くでしょ」
「それもそうだな。しかし、女テニには良い刺激になるんじゃないか?」
「まさか。それに、」
それに、激しい運動をしたりして、目を見られるのが嫌だ。平々凡々な容姿なのに、目だけが祖母の遺伝を受け継いで緑。気持ち悪い、といつだったか言われたっけ。あぁ、嫌な事思い出したな。手は無意識の内に前髪を触っていた。
「・・・理由は、その前髪・・いや、目に関係しているのか?」
「・・・そう、だね」
「そうか」
それだけ言うとお互いなぜか沈黙してしまい、前に座っていた真田くんが少しだけ身じろぐ。どうしようかと思考をめぐらせるも、自分から話題を振るなんて技術もなく、とりあえずお茶を飲む。すでに冷めてしまっているが、美味しい。
「俺は、」
幸村くんが唐突に喋りだす。
「・・・俺は、梓ちゃんの目は綺麗だと思うけどな」
「え、」
「ふむ、それは同感だな」
幸村くんに便乗して柳くんまでが、おかしなことを言い出した。だって、私の目を綺麗だって。その場に居る事が恥ずかしくなって、小声でありがとうと呟いてから席を立って割り当てられた部屋に戻る。少しだけ、頬が熱いような気がする。
「・・・綺麗、か・・」
部屋に入り鍵を閉める。普段あまり見ることのない自分の目を鏡の前に立って見る。私はこの祖母のような目が好きだったから、すごく嬉しくて。でも、きっと彼らもお世辞か何かなんだろうと思うと少しだけ寂しくなった。