Sky is the limit! | ナノ
最初に寝ていた部屋に戻り、着替えを取ってから大浴場へ向かう。そういえばここは氷帝の榊監督って人の別荘らしい。別荘持ってるとかどんな金持ちだよって思うけど、まぁ合宿する時には金銭的な方から考えれば安くなるのかな?のそのそと1階にある大浴場へ向かっていれば、曲がり角から人影が飛び出してきた。
「うおっ!」
「ぐふぅ!」
あまりに咄嗟のことだったせいで避ける事もままならず、衝突。鼻を打ちつけ後ろに尻餅をつく。荷物は隅の方へ吹っ飛んだ。一体こんな場所で走ってくる奴は誰だ!キッと睨みあげれば、私を貞子だと言った赤い髪の・・・丸井ブン太が居た。前髪のせいで私が睨んでることはわからないのか、顔を上げた瞬間にヒッと息を呑まれた。失礼だなおい。
「丸井!」
角から名前を呼びながら現れたのは、丸井くんのパートナーであるジャッカルくん。私が尻餅をついているのを見た瞬間、黒い顔が青に変わった。
「悪ぃ梓!大丈夫か?」
差し出された手も、呆気に取られてとることが出来ない。だって、
「・・・名前、」
「え?あ、名前間違ってたか?」
「いや・・・初対面で呼び捨てにされるとは思わなくて」
「あ・・・」
「ありがとう」
手を掴んで立ち上がる。少し遠くの隅へと飛んでいった着替えを取って、二人に向き合った。
「ほら、丸井も謝れよ」
「・・・・・・かった、」
「はっきり言ってくれないと聞こえないかな」
「っ、悪かったよ!」
「誠意が伝わってこないけど・・・まぁ良いや。次ぶつかったりしたら・・・」
「ヒッ」
にやりと口角を上げれば、再び丸井くんから小さな悲鳴が上がった。一体私をなんだと思っているんだ。まぁそれを利用する私も私だけど。チラリと横に立っているジャッカルくんを見れば、微かに肩を揺らして笑っていた。
「梓って意外と面白いんだな」
「・・・そうかな?」
「おう。もっと暗い奴だと思ってた」
「まぁ、否定は出来ないね」
「前髪もずっと上げとけば?」
「・・・・・、考えておくよ。それじゃあ」
「あぁ、丸井が悪かったな」
二人に別れを告げて、大浴場へ向かう。相変わらず丸井くんはムスッとした顔をしていたが、ジャッカルくんは親しみやすかったなぁ。