Sky is the limit! | ナノ

 

軽く走ってドリンクの置かれている場所に行くと、もじゃっとした髪の背の高い・・・なぜか下駄を履いた人が立っていた。

「あの・・・」

「ん?」

声を掛けたらちゃんとこっちを向いてくれる。

「・・・どちら様でしょうか?」

「・・・四天宝寺の千歳 千里たい」

「・・・あ、」

そういえば名簿にも載っていたような気がする。が、何故私服でここに居る。練習中も見かけなかったような気がするし。・・・サボりか。

「そういうお前さんは誰たい?」

「・・・渡邊 梓です」

「オサムちゃんの・・・妹?」

「親戚です」

間を開けずに言えば、きょとんとした顔をされた。それから、声を抑えるようにして笑われた。無意識に眉間にしわが寄っていたのか、千歳くんは少し笑いながらだけど謝った。

「梓って面白かたいね」

「別に普通ですけど」

数秒の沈黙が訪れたので、私は近くの籠に空になっているドリンクを放り込んでいく。全ては入りきらなかったから、また来ないといけないのか。

「俺も手伝うばい」

「え、大丈夫ですよ。それに千歳くんも早くお風呂に入らないと」

「二人でやった方が早か」

「でも、」

「人の好意は受け取っとくもんたい」

「・・・ありがとうございます」

お礼を言えば、千歳くんは3つの籠を軽々と持って、私は1つしか籠を持っていない。もう1つ持つと言ったものの、千歳くんは聞く耳なんか持たずにスタスタと歩き始めてしまった。その後を追いかけるが、歩幅が違うせいか少しだけ早足になった。

「ここでよかと?」

「はい、ありがとうございました」

「気にせんでよかよ」

ぐしゃりと私の髪を撫でてから、千歳くんはまたふらりとどこかへ行ってしまった。


  

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