Sky is the limit! | ナノ
ピーッという笛の音が聞こえて、何事かと顔を向けたらオサム兄がみんなに集合を掛けていた。オサム兄の横には、青学と氷帝の監督が立っている。
邪魔にならないくらいの場所まで私も近づくと、青学の・・確か竜崎監督?が喋りだした。
「今日の練習はこれまで!ちゃんとストレッチをするように。晩ご飯は7時からだから、それまでに風呂にも入っておくこと。以上」
それだけ言い終えると、部員達は各自ストレッチを始めた。ドリンクとかの片づけをしようかなと考えていたらオサム兄に手招きされた。ストレッチの邪魔にならないように避けながらオサム兄の所へ向かう。
「今日、どうやった?」
「どうって、なにが?」
「やってみた感想とか、みんなの能力とか・・・なんもないん?」
「んー・・・とりあえずドリンク運ぶのが大変だった。みんなは頑張ってるよ、ホントに」
「・・・梓ちゃん、おもろなかった?」
「楽しかったよ。久しぶりにテニスも出来たし」
「なら良かったわ」
ニコッと笑ったオサム兄に笑い返して、ドリンクの片付けに行く。こんなに大人数でテニスの練習する事なんて私にはなかったから、ちょっと羨ましいけど。大変っていうか、久しぶりに一日中動いたような気がするから大変だったけど、みんなの役に立てるなら、テニスが本当に好きなんだってわかる人たちだから、
「・・・、明日もがんばろっと」
「ふふ、良い心がけだね、梓ちゃん」
独り言を言ったつもりなのに、反応が返ってくるなんて思ってなかったから、思わずビクリと肩が揺れた。後ろを振り返れば、ニコニコとした笑顔の幸村くんが立っていた。
「・・・なにか」
「仁王がお世話になったみたいだからね。お礼を言いに」
「お礼を言われるようなことをした覚えはありませんが」
「俺が勝手にお礼を言いたいだけだから」
終始笑顔を絶やさない幸村くんは、威圧感というか、そういうのがあるような気がする。ありがとう、と言い残して幸村くんは立海のみんなの所へ戻って行った。その姿を見ていたら、視界の隅で銀髪が風に揺れている。すぐに視線を逸らすはずだったのに、仁王くんが私の方を見たから、視線が合った。まぁぶっちゃけ向こうには私の目が見えるわけないんだけど。
「・・・」
なにを言うわけでもなく、数秒間お互いがそのままだったけど、立海の人たちは建物へと歩き出して仁王くんも呼ばれて、スッと視線を外された。最初に会った時のような威嚇するような視線じゃなかったということは、少しでも仲良くなれたということなのだろうか。
「・・・まぁ、どうにでもなるか」
チラリと時計を見ればすでに6時を少し過ぎていた。急いでドリンクを片付けなくては。