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仁王くんと話してからドリンクをコートの隅に持って行けば、大きな人が籠を持ってきていた。えーっと、彼は確か樺地くん、だったはず。

「・・・樺地くん?」

「ウス」

「どうしたの?練習は?」

「・・・跡部さんに、手伝って来いと、言われ、ました」

「あー・・・ごめんね?」

「構い、ません」

なんというか、悪い事をしてしまった気がする。私が早く運んでればきっと樺地くんはこんな雑用することなく練習できたのに。申し訳なさで顔も見れないで居ると、少し離れた場所から跡部くんが「樺地!」と呼んだ。樺地くんってば礼儀正しく失礼しますって言って走って行ったよ。
私はどうしようかな、なんて思いながらコートを見たら、また樺地くんがこちらへ走ってくるではないか。

「どうかしたの?」

「・・・いえ、ドリンクを、取りに、来ました」

「あぁ、なるほど」

どうぞとドリンクを手渡せば、お礼を言われた。ここで飲むのかなとか思ってたら飲まないで跡部くんの元へ走っていった。そしてあろう事か樺地くんは跡部くんにドリンクを差し出した。跡部くんも何食わぬ顔でドリンクを受け取っている。

「えぇー、」

いやいや、ないだろ。まぁ今回が仮に跡部くんが忙しすぎて手が離せないということで一応納得しておこう。うん、きっとそうだ。
各学校の練習を見る。各自休憩を取りながらやっているので、今のところ問題は何もないだろう。

「ドリンク貰うで」

「クソクソ侑士!俺も!」

「はいどうぞー」

勝手にドリンクを取っていってくれるので本当に楽だ。そういえば仁王くんはどうしたのだろうかと思って、立海の方を見れば、ちゃんと練習に復帰していた。よしよし、なんて思って視線をずらせば、また樺地くんがこちらへ向かっていた。

「あれ、樺地くん?」

「タオルを、」

「あぁ、はい」

「ありがとう、ございます」

そう言ってまた樺地くんは跡部くんに向けて走っていった。その後を私も走って追う。樺地くんが跡部くんに手渡そうとしていたタオルを、横から掻っ攫う。

「・・・何してんだ、アーン?」

「跡部くんこそ何してるの」

「・・・?」

「樺地くんには、樺地くんの時間があるの。ドリンクとかタオルとか、自分で取りに来たら?」

「樺地は」

「異論は認めない。跡部くんが自分で取りに来ないなら、私帰る」

「はぁ?」

「別に難しいこと言ってるわけじゃないでしょ。樺地くんをパシリに使わなければ文句も何も言わない」

「・・・チッ、仕方ねぇ」

明らかに嫌そうな顔をしている跡部くんだが、パシリはよくない。

  

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