Sky is the limit! | ナノ
そういえばこの敷地は跡部くんの所有地らしい。コートが6面ある上に筋トレの設備も揃ってる。
「・・・金持ちのボンボンめ」
サポート役も頼まれたのでタオルとドリンクを取りにそれぞれ練習をしている横を通り過ぎる。ちなみにタオルもドリンクも玄関近くに準備して置いてあるらしい。それをみんなが取りやすい場所に運べば晴れて私の仕事は終わるわけだ。しかしこの大人数なわけであって、1回で運べるはずがない。
「女の子に力仕事させるなよー」
ぶつぶつと独り言を呟きながら1回目のドリンクとタオルを運び終える。あと何回同じことを繰り返さなければならないのか。
日差しがギラギラと照りつけてくる中、走りこみやラリーをする彼らを見ると、本当にテニスが好きなんだなと思う。
「・・・?」
2回目のドリンクを運んでいる最中に、ふとコート脇の木に誰かが居るのが見えた。一瞬サボりかと思ったが、体調を崩したならキツいだろうなってことで、歩く進路を変える。
彼の近くまで来たところで、ジャリッという砂を踏む音に彼が振り向いた。
「・・・なんの用じゃ」
ギロリと睨んだ彼は、確か仁王くん・・・だっただろうか。一度私を睨んだあと、視線はすぐにコートへ戻った。
「いやぁ、こんな所でどうしたのかと思ってさ」
「別になんでもなか」
「そう?私にはキツそうに見えるけど」
「・・・」
「今日日差し強いもんね。私もキツいからさ、」
「・・・」
「・・・ドリンクでもどう?」
「要らん」
即答されるとかなんか悲しいんだが。ジッとコートを見据える仁王くん。そういえば仁王くんって色白いから暑いの苦手とか?私があからさまに溜め息を吐けば、それに気づいた仁王くんは再度睨んできた。
「なんじぶっ・・・!」
籠に入っていたタオルを一枚投げつけると、顔に思いっきり当たった。
「おまん、一体なにがしたいんじゃ!」
「おー、こっわ。はい、ドリンク」
「要らんって言っとるじゃろ!」
「じゃあ熱中症で倒れてれば?」
「・・・っ、」
ギリッと歯を食いしばる仁王くん。いやぁ、そんな顔されるといじめたくなるよ。なんてね。
「仁王くん、」
「うるさい黙れ」
「・・・アンタさ、何がしたいわけ?」
「は、」
「こんな場所までわざわざ来て、みんなの練習を木陰で見てるだけ?ダッサ」
「・・・」
「練習したいならドリンクのんで頑張りなよ」
ほら、と無理矢理顔にドリンクを押し付けたら嫌な顔をしながらもドリンクを受け取ってくれた。
「・・・礼は言わんぞ」
「別に礼言われる事してないし。さっさと練習戻りなよー」
あー、私も早くドリンク運び終わらなきゃなぁ。めんどくさい。