Sky is the limit! | ナノ
「聞いたことぐらいあるやろ」
数年前に、アメリカJr.大会に出て最年少で優勝を果たし、更にはプロも参加する大会にて優勝。その姿はまさに“阿修羅”の如く。世界を驚かせた彼女は、翌年にはテニス界から姿を消した。
「その“阿修羅”が、」
「梓ちゃんってわけや」
嘘だろという声が聞こえ、疑惑の視線が突き刺さる。あまり注目されるのは好きじゃないんだけどな。
「本当に、お前が・・・?」
「そうだけど。何か不服かな、跡部くん?」
「・・・」
「なあなあ、昔アメリカに住んでたん?」
キラキラと輝くような瞳を向けてきた遠山くん。しかし近い。ただでさえ声が大きいんだからもう少し離れて話してもらいたい。なんて私が思ってる間にも遠山くんは話しかけてくる。
「アメリカには、お母さんの知り合いが居たから。大会は・・・暇潰しかな」
「じゃあテニスも暇潰しやったんか!?」
「・・・いや、テニスは楽しいから」
「!姉ちゃん笑った方がかわええよ!」
「え、あ・・・笑ってた?」
「おん!」
そうか、笑ってたのか。自分でもあまり笑わないと自覚してるせいかちょっと驚いた。でもまぁ、テニスが好きって気持ちに偽りはないし。
「そんじゃあ、練習に戻り」
パンパンとオサム兄が手を叩いて、彼らは渋々と練習に戻っていった。
テニスは好きだよ。どんなスポーツよりも。