隣のあの子が消えたらしい | ナノ
屋上のドアを力一杯開けるが、誰も居ない。屋上の中央まで歩いて辺りを見回すが、人の気配は全くしない。
「何が、どうなってんだよ!」
叫んだって何も変わりはしないのに、叫ばずにはいられなかった。意味がわからない。なんで。疑問ばかりが頭の中を埋め尽くす。今まで使ったことがないくらい頭を回転させるが、やっぱり意味がわからない。
ぐるぐると思考のループから抜け出せずにいると、ガチャリとドアが開く音がした。もしかしたら和嶋かもしれないと思って期待を込めてドアの方を振り向けば、居たのは仁王先輩だった。
「…はぁ」
「先輩の顔見ていきなり溜め息とは失礼なり」
「すんません」
謝るものの、心ここにあらず。
「それにしても赤也が屋上でサボりとは珍しいのぅ」
「…仁王先輩はいつも屋上でサボってんスか?」
「まぁ、そうじゃのぅ。たまに話し相手が居るがの」
「っ!まさかそれって、和嶋じゃないっスか!?」
「!赤也…文香を覚えとるんか?」
驚愕。まさか仁王先輩が和嶋のことを覚えてるなんて…名前呼びなのが若干気になるが。とりあえず、俺だけの妄想じゃなかった。仁王先輩が居る日陰の方へ走って駆け寄れば、何か考えてるような顔をしていた。
「のぅ、なんで俺と赤也は覚えとるんじゃろうな」
「…俺にも、わからないっス。今日学校に来たら誰も知らなくて」
「―――参謀のところに行ってみるか」
柳先輩か…確かに和嶋のことは柳先輩から聞いたから、この人が知らないと可笑しい。でも、もし知らなかったら?この世界で、現時点で和嶋のことを覚えてるのは俺と仁王先輩だけってことか…。なんか、悲しいな。
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