貧乏少女M | ナノ
蓮二のベッドの上でごろごろと寝そべっていたら(だって家にベッドなんて無いんだもん)、おばさんが「ご飯よー」って呼んでくれた。
「今日は友里ちゃんの好きなハンバーグよ」
「わぁ!ありがとうございますっ」
テーブルの上には出来立てで湯気があがっているご飯が並べられていた。温かいご飯なんていつ振りだろうか。
おばさんはいつも私が食べたいものを出してくれる。それが凄くて、前に一度聞いた事があった。なんで私が食べたいものが分かるの?って。そしたら驚くことに全て蓮二のデータらしい。翌日の私の食べたいものまで分かるとか、エスパーかって。でもそんなのが嬉しかったり。
「ねぇ友里ちゃん」
「なんですか?」
「もし良かったら、私たちと一緒に暮らさない?」
「・・・え?」
「女の子が一人であのアパートに住んでるなんて、やっぱり怖いのよ。友里ちゃんが良かったらだけど・・・どう?」
「・・・あの、」
「“ごめんなさい。でも大丈夫ですよ”と友里が言う確立92%」
私の言葉を遮ったのは紛れもない蓮二で、しかも私が言おうとしてたことまで当たっている。それを聞いたおばさんは残念そうにしていたけど、私はご飯を恵んでもらえるだけで、構ってもらえるだけで十分に幸せなんだ。
「それじゃあ、ご馳走様でした!」
「いいえ、また来てね」
「はい!」
「じゃあ蓮二、送っていきなさいな」
「あぁ、そのつもりだ」
蓮二はいつも送ってくれる。家が隣の隣だから大丈夫だと伝えても、必ずついてくる。
「ね、蓮二」
「なんだ?」
「私ね、すっごく幸せ者だなぁって。おばさんにも心配されちゃってさ」
「母さんは心配性だからな。だが、母さんだけが心配してるわけじゃない」
「・・・?」
「俺も心配している。今日はちゃんと飯を食べれたのか、家の戸締りはちゃんとしたのか、とかな」
「なっ、私だって子供じゃないんだから大丈夫だよ!・・・でも、ありがとね」
「気にするな」
「うん。へへっ」
「じゃあ、ちゃんと戸締りしてから寝ろよ」
「分かってるよ。じゃあ、おやすみ」
「おやすみ、友里」
自分の家に帰ると、誰も居ない部屋。明かりもついていないのが、一人暮らししてるんだなって感じる。別にホームシックってわけでもないんだけど、蓮二の家の温かさに触れた日には少しだけ辛い。まあ両親が山にこもって自給自足の生活してるのを止めたいとも思わない私も悪いのかもしれないけど。
「・・・まあ、寝るか」
シャワーをなるべく素早く入って、スウェットに着替えて、家の戸締りを確認して。電気を消して、目を閉じた。
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