貧乏少女M | ナノ
今日の部活はミーティングだけで、内容も今度の練習試合のこと。話はいつもの部活に比べると凄く早く終わって、レギュラー達はそれぞれ自主練をしたりこれから遊ぼうと言ってたり。そんな中、珍しくいつもなら自主練をして帰る蓮二が帰る準備をして早々に部室から出て行った。何かあるのかと思いながら自分のラケットを取り出そうとしたときに、何かが落ちているのに気がついた。
「・・・?」
落ちていたのは最近コンビニなどで売られているゆるキャラの・・・・・まぁ、アレだ。落ちていた場所はさっきまで蓮二が鞄を置いていたところ。まさか、とは思ったもののとりあえず聞いてみようとそれを手に部室を出た。
校門の所まで行くと、蓮二が携帯を見ながら立っていた。誰かと待ち合わせか・・?
「・・・蓮二」
「どうした、精市」
「これが落ちてたんだけど」
名前を呼べばいつもの様に振り返ったが、俺が手にしていたマスコットを見た瞬間、一瞬だけど眉間にしわが寄った気がした。
「すまない、気が付かなかった」
「いや、構わないよ。それより誰かと待ち合わせかい?」
「・・・まあ、そういうところだ」
「珍しいな。蓮二が誰かを待つなんて・・・一体どんな子なんd「レンレーン!」」
俺にセリフを被せてくるなんて、誰だよ。声のした方を見てみれば、笑顔で手を振りながらこちらに走ってくる女子生徒が一名。ファンの奴?いや、でも確かにさっき・・・、
「レンレンは止めろといつも言ってるだろう」
「すいまそーりー蓮二!」
「はぁ・・・まあ良い」
蓮二はいつもと変わらない・・いや、少しだけ雰囲気が柔らかいような気がする。それに対してこの女子は、誰だ?蓮二と親しそうだけど・・・もしかして彼女?
「・・・精市、勘違いをするなよ」
「え、」
「友里は・・・まあ早い話が神奈川に来てからの幼馴染みたいなものだ」
「あ・・・あぁ、そういうこと」
蓮二に女の子の幼馴染が居る事自体、全く知らなかったから驚いた。それに蓮二はあまり女子を近づけない雰囲気があるから、かなり意外だ。
「あ!それって・・・」
「・・・?」
蓮二の幼馴染が指し示したのは俺が持っているゆるキャラのマスコット。
「これがどうかしたのかい?」
「めっちゃ好きなの!でも買えないんだよねー」
目線の高さまで上げてあげれば穴が開くんじゃないかってくらいにマスコットを見ていた。え、もしかして・・・。
「蓮二、これってこの子の為に?」
「ふむ、そうだが」
「それじゃあ、はい」
「!良いの?」
「元々は蓮二が落としたものを俺が届けに来ただけだし」
「うぉおお!ありがとう美人さん!レンレン!」
俺からマスコットをひったくるように取った彼女は今、俺たちのすぐ横ではしゃいでいる。こんな子がこの学校に居たのか。
「友里」
「(ビクッ)・・・あい」
「精市、こっちは宮下 友里。まあ成績は良いんだが常識があまり無い奴だ」
「酷いよ蓮二!」
「・・・初めまして、宮下さん。俺はテニス部部長の幸村 精市。よろしくね」
「お、テニス部の部長とか凄いね。幸ちゃんって呼んでいい?」
「それはちょっとイヤだな」
「じゃあ、ゆっきーね!蓮二、帰ろ」
「あぁ。またな、精市」
「あ、あぁ・・・」
嵐のように宮下さんは蓮二を連れて学校を出て行った。なんていうか、いろんな意味で凄いんじゃないかなって思う。それに・・・、
「俺のこと知らないのか。・・・面白そう」
クスリ、と笑ってからテニスコートへ戻って練習を始めた。
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