貧乏少女M | ナノ
カリカリとシャーペンの走る音だけが教室の中に響く。そう、まさしく今はテスト真っ最中。しかも嫌いな英語。
「――っ、(ヤベェ、パンの耳先輩が言ったとこばっか出てる…!)」
この前から少しずつ勉強を教えてもらった成果が、目に見える。だって英語の問題スラスラ解けるなんて一生ないと思ってたのに…!
俺がシャーペンを走らせていたら、どこからか鉛筆を転がすようなカラカラという音がした。俺もちょっと前まではあんなんだったんだって思いながら、赤点で補習にならないようにテストに集中した。
「テスト返すぞ!」
後日、テスト返却が行われた。
「先生ー、なんでそんな嬉しそうなんですか」
「よくぞ聞いてくれた!先生はなぁ、ホントに嬉しいんだ!なっ、切原!」
「はっ?俺…?」
「切原はな、やれば出来ると思ってたんだ!」
ほら、と言ってクラス全員に見えるように俺の回答が見せられた。え、嘘……マジかよ!
先生から答案用紙を奪い取って、教室から飛び出た。後ろから先生の声がしたけど、今はそんなことどうでも良い。
「っ、パンの耳先輩!」
「あれ、切原少年」
「赤也ぁ!授業はどうした!」
「ひっ、副部長!」
「まぁまぁ、真田くん落ち着きまたえ」
「そうだよ弦ちゃん、やぎゅの言う通り。んで?切原少年よ、どうした」
「見てくださいよ!テスト!」
バッと先輩達の前にテストを出せば、まじまじと見られた。
「む、73点か。赤也にしてはよく頑張ったな」
「そうですね。いつも赤点ギリギリなのに」
「へぇ、良かったね!切原少年」
「っス!これもパンの耳先輩が教えてくれたからっスよ!」
「そう?へへ、それなら嬉しいな」
にこりと笑った先輩に頭を撫でられた。
「あの、授業中なんだけど」
「「「「!!」」」」
このクラスにいた先生に声を掛けられて、副部長を見たらヤバいと思ったから、ダッシュで自分のクラスに帰った。赤也と俺を呼ぶ真田副部長の声が学校全体に響き渡った。放課後の部活で、先輩達に弄られたのは言うまでもなく。
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