貧乏少女M | ナノ

 

担任の気だるい挨拶が終わって、現在放課後。鞄に詰める教科書もなく―全てロッカーに置き勉だ―机の横に掛けていた学校指定の鞄を手に持つ。隣の子にバイバイと手を振って教室を出た。

「友里ー、今日バイトだっけ?」

「うん、そだよ」

「あー、部活休みになったから寄り道しようと思ったのになぁ」

「マジで!?うわータイミング悪っ」

シフトを入れたのは自分だから文句が言えるわけでもなく、泣く泣くしーちゃんと遊ぶのを断念しバイト先へ向かった。因みにバイト場所は駅前のカフェ。小さななカフェだから平日の人の出入りは疎ら。その分、土日はそこそこ繁盛するのだ。なんたってケーキは絶品だ。

「いらっしゃいませーって宮下ちゃん!」

「店長、この間振りでーす」

「今ちょっと忙しいから急いで着替えて来てくれる?」

「はーい!」

よくよく店内を見ればいつもの平日に比べて人が多いような…?しかも立海生?
何かあるのか気になったがとりあえず着替えに裏へ入る。着替えといっても、荷物置いてエプロンするだけ。

「宮下ちゃん、オーダーお願い」

「りょうかーい」

呼ばれたお客さんのところに走っていけば、嫌でも目につく銀に…赤の方は知らないが。テーブルに目を移せばまだ手をつけられていないケーキが6個。そしてケーキを食べているのは赤い方のみ。もしかしてこれ全部食べるのか。

「ってかこの繁盛はにおーのせいか」

「…まさかここで友里に会うなんて思わなかったぜよ」

「誰、仁王の知り合い?」

「宮下 友里、友達じゃき」

「ふうん…て、友達!?」

上から下までまるで品定めしているかのような視線に、自然と眉が寄る。それから赤いのは、パッと笑顔になった。

「俺、丸井 ブン太!シクヨロ」

そう言ってウィンクを飛ばされた。なんだこいつは。におーの方をチラリと見れば何が面白いのか笑いをこらえている。

「…ブンちゃんね。で、オーダーは?」

「ブンちゃん呼ぶな!これとこれ、追加で」

「まだ食べるのか」

「当たり前だろぃ」

太るぞ、という言葉は私の心の中に留めた。ふと周りを見れば、女子にガン見されていた。なぜだ…!




 

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