貧乏少女M | ナノ
「しーちゃんや、しーちゃん」
「なに?エビフライならあげないわよ」
「ぅぐ…っ」
今日はいつも教室で食べているお昼を、なんとなくテラスで食べることにした。まぁ食べるものはいつもと変わらずパンの耳なんだけども…。
「あのさ、めっちゃ見られてる」
「…誰から?」
あそこ、と言いながらしーちゃんの後ろを指す。だってさ、さっきから私と目が合ってるはずなのにただ固まっている少年。エビフライを食べながら弁当を片手に振り返るしーちゃん。
「あれ、切原赤也じゃん」
「……しーちゃんの彼氏!?」
だから私と二人でお弁当食べてるのが気に入らないとか?やっべ、そう思ったら睨まれてるような気がする。
「友里、テニス部よ」
「……あぁ、」
私が納得したのを見て、しーちゃんはまたお弁当を食べ始めた。あ、サラダ美味しそう。
私も自分の昼食に手をつけ始めた時に、なぜか切原赤也が近づいてきた。なんだなんだ。
「アンタ、」
もぐもぐとパンの耳を食べながら切原赤也を見上げる。
「友里、あーん」
「お、あーん」
切原赤也が何しに来たのかわからないが、とりあえずしーちゃんがおかず…野菜炒めをくれたのでいただいた。もぐもぐと口を動かしていたら、バンッとテーブルを叩かれた。
「…なんぞ?」
「…………アンタ、それしかないのかよ?」
「それとはなんだ、それとは!パンの耳は偉大なんだぞ!」
そう意気込めばなんか憐れんだような視線が注がれた。
「俺、切原 赤也。これアンタにやるよ」
「…!!切原少年、君はなんて優しいんだ…!」
テーブルの上に置かれたのは焼そばパン。
「私は宮下 友里!3年A組だ!何かあったら頼ると良い、お金は貸せないが!」
「っス、」
「友里、切原引いてるから」
無理矢理握手をして上下にブンブンて振った。それから切原少年は誰かと待ち合わせがあったのか慌てて走って行ってしまった。
「しーちゃん、切原少年良い子だね!」
「……私は友里がいつか食べ物に釣られて誘拐されないか心配だわ」
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