貧乏少女M | ナノ

 

この前しーちゃんが借りた本を、現在私が返却してます。しーちゃんが借りた本を私が。まぁぶっちゃけ面倒なんだけど、しーちゃんにはいつもお世話になってるから。

「これ、返します」

「はい。ありがとうございました」

カウンターに本を出せばすぐに任務完了。でも図書室なんて滅多に来ないから、少しだけ覗いていこうと思ったとき。

「珍しいな、友里が図書室に居るなんて」

「あ、レンレン!」

「レンレンは止めろと言ってるだろ」

「うん。蓮二はここで何してるの?」

「本を借りに来る以外に何がある」

「…そっか」

まさか図書室でばったり蓮二と会うなんて思わなかった。
というより、学校ではあまり会うことがなかった。別に毎日会わないと嫌とかそういうのはお互いになかったし、かといって知らんぷりをするわけでもなく。廊下とかですれ違ったら挨拶したりちょっと話すくらい。だから、ファンの子達でも私と蓮二の関係を知ってる人は少ないんじゃないかなって思ってる。まぁ、知っててもだからどうしたって感じなんだけど。
でもさ、図書委員の子がものすごく驚いた顔して見てるからね、つい。

「じゃあね」
「またな、友里」

ひらひらと手を振れば軽く手をあげて返してくれる。そのまま図書室を出て、放課後の誰も残っていないであろう教室へ向かった。

「あれ、弦ちゃん?」

「む、宮下か」

「なにしてんのー?」

教室に入れば、誰もいないと思ってたのに、意外にも弦ちゃんこと真田が残っていた。いつもならすぐに部活に行くんだけどな。弦ちゃんの席の近くまで行ってみれば、なにやらプリントの束が置かれていた。

「先生に集計を頼まれてな」

「なーる。でも部活は?」

「幸村には柳生が説明しているはずだ」

「ふーん…」

「宮下こそいつもなら帰っている時間だが、どうしたのだ」

「しーちゃんに頼まれて本を返しに」

「そうか」

それだけ呟くと、弦ちゃんはまたプリントとにらめっこを始めた。眉間のしわがすごいことになってますぜ…!チラリと時計を見れば、きっとまだ部活も始まったばかりだろうという時間。現にさっきまで図書室には蓮二が居たのだから。

「よし、ここは一つ私が代わってあげましょう!」

「む…いや、これは俺が頼まれたことだからな…」

「だいじょーぶ、問題ナッシング。集計だけでしょ?弦ちゃんは部活でも頑張って来なよ」

「しかし、」

「ほら、鞄持って!さっさと席立つ!」

「む、」

力任せに弦ちゃんをイスから立ち上がらせ、鞄を持たせて教室から追い出す。弦ちゃんも渋々といった感じだったが、やはり部活を早くしたいのか

「かたじけない」

と残して部活へ向かった。しかし…相変わらず弦ちゃんの言葉は現代に合わないと思うのは、胸の内に秘めておこう。

「さて、やりますか」

ザッと見ても、3分の1は終わってるような気がするので、案外早く終わるかな。弦ちゃんの席を借りて、集計を始めた。



 

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