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「そういえばまだ自己紹介をしてなかったね」

点けられたテレビをぼんやりと見ていたら、前のソファに座っている赤司さんが呟いた。そう言われてみれば、この家のルールを教えて貰った後は赤司さんがテレビを見始めたので一緒になって見ていただけだった。

「僕は赤司征十郎。好きに呼ぶといい。あと、敬語も要らないよ」

「え、あ、私は常盤志乃です。えっと・・・新居が見つかるまでよろしくお願いします、赤司くん・・・って呼んでも大丈夫ですか?」

「構わないよ。こちらこそよろしく、常盤さん」

なんともまぁ、在り来たりな自己紹介というか。むしろやる必要があったのかと疑うくらいに内容のない赤司くんと私の自己紹介が終わった。会話のなくなった私たちの間には、テレビから流れてくる音だけが聞こえている。そういえば、部屋の案内とか聞いといた方が良いんだよね?勝手に開けちゃったりしたらまずい部屋もあるかもしれないし。

「あの、赤司くん。少し聞きたいことが「ただいまー!」」

あります、と続こうとした私の言葉は玄関の方から聞こえた可愛らしい声によって一刀両断されたのである。パタパタとスリッパの擦れる音が近づいて来て、リビングに見えたのはピンク色の髪をしたグラマラスな方だった。

「あれっ、赤司くん、その子は?」

こてん、と可愛らしく首を傾げた彼女は、リビングへ入ってきた。一体誰なんだ、というか、めっちゃ見られてるんですけど。あれか、もしかして2人は付き合っちゃったりしてて、なに私の赤司くんと二人っきりなの的な?

「さつき、常盤さんが困ってるよ」

「へ?あ、ごめんね?つい」

「あ、いえ・・・私の方こそすみません」

「なんで謝るの?あ、私はね桃井さつき!さつきって呼んでくれたら嬉しいな」

「さつき、ちゃん?常盤志乃です」

「志乃ちゃんね!」

どうやらさつきちゃんはテンション高め系の女の子らしい。掴まれた両手がブンブンと上下に振られるが、この細腕にどこからそんな力が出てくるのですか。どうして良いのかわからずされるがままになっていたところ、赤司くんがさつきちゃんの名前を呼んだことによって収まった。

「今日から一緒に住むことになってる」

「え、私何も聞いてないよ?」

「言ってないからな」

「みんなにも?」

「・・・そういえば、言ってないな」

赤司くんとさつきちゃんの会話を聞いて、次第に顔が青くなっていく。え、私って本当にここに来て良かったの?

「まあ、大丈夫だろう。ここで僕に逆らう奴は居ないし」

「えっ、」

「それもそうだけど・・・メールでもしたら?」

淡々と話を進める2人についていけず、結果もうどうにでもなれと思った。
  

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