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神奈川から東京へ出てきた私は、現在地図を見ながら新居地へと向かっています。洋服などは宅急便で送ってきたから、明日ぐらいには恐らく着くだろう。今日必要になりそうなものはキャリーバックに入れて、現在もガラガラと音を立てながら引いている。
「えっと、ここ・・・?」
地図が示しているのは恐らくこの家なんだろう。なんだろうけど・・・ドア大きくないですか?思わず呆気にとられたが、こんな場所で突っ立ってて不審者に思われるのも嫌なので、とりあえずインターホンを押してみた。
『はい、』
「あっ、あの・・・赤司さん、ですか?常盤です」
『常盤・・・ああ、待って。すぐ開けるよ』
声を聞く限りではとても優しそうで。そういえば私の他にもルームシェアしてる人が何人か居ると言っていた。仲良く、なれるだろうか。ドキドキと加速する心臓を落ち着かせようと息を吸った瞬間、玄関のドアが開いた。中から出てきたのは真っ赤な髪で、綺麗なオッドアイをした人だった。
「常盤さん?」
「あっ、はい!そうです。えっと、赤司さん、ですか?」
「そうだよ。まあ、立ち話もなんだし、中に入ってよ」
お邪魔します、と言ってドアを潜れば赤司さんは笑いながら、今日から君もここの住人だろう、なんて。思わずにやけそうになるのを必死に我慢して、案内されたリビングのソファに腰掛ける。外観も立派だったけど内装も負けず劣らずすごい。が、それに似合わずザリガニの水槽があるのがギャップというものだろうか。
「コーヒーどうぞ。砂糖はこれね」
「ありがとう、ございます」
「敬語は要らないよ。同い年だしね。さてと、ここで暮らすにあたってなんだけど・・・」
その1、ここの人間と一緒に住んでることを公言しないこと
その2、相手に無遠慮に干渉しないこと
その3、友達は連れて来ないこと
その4、掃除は気づいた人がやること
その5、夜に次の日のスケジュールをホワイトボードに書いておくこと
「あとは・・・そうだ、料理は出来るかい?」
「えっと、それなりには」
「じゃあ、夕食の担当は常盤さんにお願いしてもいいかな」
「別に大丈夫だけど・・・朝とかは?」
「・・・作ってくれるなら大歓迎だけど」
「・・・わかりました。あの、今までの担当の人とかは?」
「ああ、ここでまともな料理が出来るのは1人だけだからね。僕も出来るけどめんどくさいし」
優雅にコーヒーを飲む赤司さん。私もコーヒーを貰おうとカップを手に取った時、思い出したように言われた。
「もし、みんなに迷惑をかけたら出て行ってもらうからね」
さも当然のように。いや、まあそれが当たり前なんだろうけど。どう考えてもイレギュラーなのは私のほうだし。はい、とだけ短く返事をすれば、赤司さんは満足したように微笑んだ。