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放課後3年C組へ行けば、すでに幸村先輩は居ないとの事だった。
「部活に行ったと思うけど」
「部活?何部ですか?」
「え・・・テニス部なんだけど、知らないの?」
3年C組に居た女の先輩に聞いてみればテニス部らしい。それなら切原に渡せば良かったなーなんて思いながらお礼を言って自分の教室へ戻る。テニス部ということは外なので、帰りがけに渡せばいい。鞄を掴み、テニスコートへ向かった。
「おお・・・すごい人」
フェンスを囲むように女子の壁が出来ていてとてもじゃないけど近づける気がしない。困ったなー、なんて思いながら少し離れた場所から見ていたら背後から「あれ?」と言う声が聞こえた。振り向いてみれば、まあ綺麗な青色をした髪の美人さんがいらっしゃいました。
「テニス部に何か用事かい?」
「えっと・・・幸村先輩という人を探してまして」
そう言うと美人さんはキョトンとした顔をした後にふんわりと微笑んだ。
「俺が幸村精市だよ」
「えっ・・・あ、すみません」
「ううん、気にしなくて良いよ。それで?」
「ブレザー、ありがとうございました!」
畳んでいたブレザーを差し出せば、幸村先輩はどういたしまして、と言いながら受け取ってくれた。よし、これにて私のミッションはクリアである!
「それじゃあ、失礼します」
「あ、待って」
お辞儀をしてから通り過ぎようとすれば手首を捕まれ帰ろうにも帰れない。私が何か粗相をしてしまったのだろうか。幸村先輩の顔を見れば笑顔のままで。逆になんか怖いんですけども。
「あの、」
「名前、聞いてもいいかな?」
「え、名前・・・ですか?」
「うん」
「・・・雑賀奈緒ですけど」
「雑賀さん、またね。引き止めちゃってごめんね」
「いえ、」
それじゃあ、と言って幸村先輩は颯爽とテニスコートへ向かった。ていうか、またねってどういうこと?いや、ただの社交辞令か。まあ良いや、帰ろう。
「雑賀さん!」
「え?」
「お昼に聞いてた曲、次にあげる曲なんでしょ?楽しみにしてる」
にっこりと笑顔のまま、幸村先輩は私から少し離れた場所で爆弾を落としていった。